ポケモントレーナー・サトシの苦悩の日々 サトシの手記前編
どんもっす。
ポケモンGoで早速遊んでみたのですが、リアル世界でポケモンをゲットするのは中々難しいことが分かりました。
山や川みたいな地形とか、物理的な移動距離(高さ含む)とか、お金とか、飯とか、天気とか…
そもそもリアル世界は広すぎます…。
初代ポケモンマスターのサトシの苦労は並々ならぬものだったんですね。
ってことで、リアル世界にサトシがいた場合、というかポケモンの世界がそのまま現実世界だった場合のサトシの苦悩について、サトシになりきって書いてみました。
・旅立ち初日
オレはサトシ。
偉大なポケモンマスターになるのが夢だ。
今日はいよいよ旅立ちの日だ。
母親とは別れの挨拶をもう済ませてある。
ハンカチは持ったのか、ティッシュは持ったのか、生水は飲むんじゃないよ、お金は大事に使うんだよ…と相変わらず心配性だ。
最も、一人息子が明日をも知れぬ旅に出るのだから当然と言えば当然か。
ポケモントレーナーは決して安全な仕事ではない。
個々の街に雇われてジムトレーナーになると、後輩の育成や安全講習などで給料を貰えるのでそこまでの危険性はない。
だが、フリーのトレーナーは別だ。
多種のポケモンを捕まえようとすると、世界中をくまなく歩く必要がある。
熱砂の砂漠や吹雪の山、誰もまだ足を踏み入れたことのない未開の洞窟…。
毎年多くのポケモントレーナーが命を落としているのが事実だ。
街の外へ出たら、誰も安全を約束してくれない。
自分の身を守るのは自分自身だ。
けど、それ以上にやりがいのある仕事だとオレは思っている。
全世界には150匹のポケモンがいると推定されているが、姿すら誰も見たことのないポケモンも多い。
それらのポケモンを見つける旅は、夢と希望に溢れ、スリル満点の大冒険に違いない。
これをやらない手はないだろう。
生まれ育った街、マサラタウンを出ようとするとオーキド博士に呼び止められた。
どうやら、ポケモンを持たずに街の外へでるのはご法度らしい。
夢と希望溢れるロマンスに浸りながら旅立とうとしていたのに、いきなり出鼻をくじかれた気分だ。
オーキド博士のポケモン研究所へ行ってみると、「フシギダネ」、「ヒトカゲ」、「ゼニガメ」という三種類のポケモンを用意してくれていた。
ライバルも呼ばれていたようだ。
オレたちに、それぞれこの内の一匹を連れてポケモン図鑑を完成させる旅に出てほしいとのことだった。
元々ポケモントレーナーになるために旅立つつもりだったので、願ったりかなったりだ。
ゼニガメ、君に決めた!!
何となく人懐っこそうな顔をしているゼニガメを選んだ。
ライバルはヒトカゲを選んだようだ。
選んだ傍から早速対戦を挑んできた。
こいつは昔からこうだった。
事あるごとに絡んでくる。
今選んだばかりのポケモンで優劣なんかつくのか?
何とかうっとうしいライバルを倒して、いよいよマサラタウンを出る。
偉大なポケモンマスターになるために!
マサラタウンにさよならバイバイだ!
・5日目
ニビシティに到着した。
途中、コラッタやオニスズメ、ピカチュウといったポケモンをゲットした。
ポケモンという名に相応しい、小さくて可愛らしい奴らだ。
特に、一番最初に仲間に入れることができたコラッタには自然と愛着がわく。
こいつらもオレに懐いてくれている。
オレのポケモントレーナーとしての資質は満更でもないらしい。
それにしても、ニビシティのジムリーダーであるタケシには心底がっかりだ。
ジムリーダーというからにはさぞかし強くて珍しいポケモンを持っているんだろうと思いきや、イシツブテとイワークの二匹だけ。
普通ポケモンでパーティ編成をするときは、メインの属性を決めて、弱点をカバーできる属性のポケモンを数匹入れておくのがセオリーだ。
サルでも知っている。
メンバーもMaxの6匹いたほうが良いに決まっている。
それらのセオリーをあえて破り、同じ属性のポケモンがたったの二匹。
よほど強くて自信のある二匹なのかと期待したが、あっさりゼニガメ一匹で撃破できた。
なんなんだ…。
やる気の欠片も感じない弱さであった。
もちろん、ニビジム内のポケモントレーナーも輪をかけて弱かった。
この人たちは普段何をしているんだろうか…。
ポケモントレーナーという仕事を舐めているとしか思えない。
なんか、思い描いていた理想と違う気がするなぁ。
・13日目
想像以上にこのポケモン集めの行程はきついということが分かり始めてきた。
街から街へと徒歩で移動するだけでも一日がかりでへとへとだ。
ましてやポケモンを集めながらだと、想像を絶するきつさだった。
普通なら通らないような川や山、断崖絶壁に至るまで、この世界の隅々まで調べ尽くすことが要求されるからだ。
もしも、あそこの山に珍しいポケモンがいたら…
そう思うと、行って調べずにはいられない。
ポケモンマスターへの道がかくも険しいものだったとは思いもよらなかった。
ニビシティを出て、早4日目。
次の街はまだ見えない。
今日も野宿だ。
でも、愛すべきポケモンたちがいてくれるおかげで、ちっとも寂しくない。
こいつらの笑顔を見ていると、旅の疲れもふっとぶ。
問題は食料と水だ。
街から持っていく分では、とてもじゃないが足りない。
どんなにリュックサックに詰め込んでも3日分がせいぜいだ。
大きなリュックを買えばいいのかもしれないけど、お金にそんな余裕はないし、そもそも荷物が多くなると動きづらくて余計に体力を消耗してしまう。
その辺に生えているキノコなんかは危なっかしくて食べれたもんじゃないし…
どこかの配管工が心底羨ましい。
かといって、探索範囲を狭めてしまったら本末転倒だ。
何のために旅をしているのかわかったもんじゃない。
せめて、街から街への移動時間(探索時間含む)がわかればもう少し計画的に動けるんだけど…。
仕方なく、一日に食べる量を減らすことにした。
ひもじい…。
先行きが不安だ。
・17日目
ようやくハナダシティに到着した。
久しぶりの文明だ!
ニビシティをでて7日目で食料が尽きたときはさすがに死を覚悟したが、人間1日くらいは水だけで何とかなるもんだ。
それがわかっただけでも良かった。
オレは案外サバイバル向きの人間かもしれない。
街を発見すると、野宿した日々が懐かしくもある。
とはいえ、ハナダシティが見えたときは心底嬉しかったし、涙も出た。
ニビシティからの途中、オツキミヤマというとんでもない場所を通過したときは目を疑った。
ヤマなのに地下があるとはどういうことなのか。
広いし暗いしで心細かったが、意外にも他のポケモントレーナーが居てくれたお蔭で何とか平静を保てた。
一人きりだととてもじゃないが冷静でいられそうにない。
というか、発狂する自信がある。
ズバットがやたらといたし。
とにかく生きた心地がしなかった。
途中、理科系の男とポケモン対戦して勝ったら、「貝の化石」か「こうらの化石」のどちらかをくれるということだった。
遠慮なく叩き潰し、「こうらの化石」をゲットした。
ゼニガメといい、こうらの化石といい、オレは甲羅系に萌える素質でもあるのだろうか。
なんとなく癒される気分になるのは事実だ。
化石なのでどうせ孵化することはないだろうから、 ポケモンセンターに預けておきたい。
何より持ち歩くには重い。
ハナダジムのリーダーであるカスミにもタケシ同様にがっかりさせられた。
弱点丸出しで、雷ポケモンの代表であるピカチュウで一蹴してやった。
遠路はるばるやってきたのに、拍子抜けもいいところだ。
タケシといい、カスミといい、一体全体何を考えているんであろうか…。
ポケモンを舐めてるとしか思えない。
他のトレーナーもトレーナーだ。
こんなの弱点突けば簡単に倒せるじゃないか!って誰かアドバイスしろよ。
というか弱点を突かなくても倒せる。
それくらい弱い。
小さいころはポケモントレーナーに憧れたんだけどなぁ。
理想と現実は全然違うもんだ。
・20日目
ここ2~3日はハナダシティを拠点としてポケモン集めと今現在のポケモンたちのレベル上げにいそしんでいる。
というのも、前回の旅で長距離移動の困難が身に染みたからだ。
いくらポケモンのためとはいえ、何度もあんな思いはしたくない。
街を離れることに対して、一抹の不安を覚える。
とはいえ、いつまでもハナダシティに滞在しているわけにもいかない。
一か所に留まっていてもポケモン集めが捗らないというのももちろん理由の一つだが、最大の理由はお金だ。
街での滞在時間が長くなるとどうしてもお金がかかってしまう。
野宿でもいいんだけど、野宿ばかりだと疲れがたまって体調管理が上手くいかない。
それに街中で野宿していると職務質問を受けかねない。
それでなくても見知らぬ子どもが1人でうろついていたら変な目で見られるご時世だ。
メンドー毎は極力避けたい。
交番に連れていかれて、一日中職務質問なんてされた日には、取れる疲れも取れない。
ということで街にいる間は極力ホテルに泊まるようにしている。
もちろん高級ホテルなんかではなく、どこにでもありそうな安価なビジネスホテルだ。
値段は素泊まりで一泊3000円なり。
それでも、布団の上で眠れて、水洗トイレを使えて、風呂に入れるのはありがたい。
街にいる間、これくらいの贅沢をしても罰は当たらないだろう。
それにしても資金調達には頭を悩ませられる。
野生のポケモンを倒したり、ゲットしたところでお金がもらえるわけではない。
余程貴重なポケモンであれば、捕獲すればどこかで高く買い取ってもらうことができるのかもしれないが、今のところ出会えてないし、何よりお金と引き換えは気が引ける。
貴重なポケモンほど手元に置いておきたい気持ちもある。
お金と引き換えにそれっきり…なんてのは嫌だ。
ポケモントレーナーたちの資金源は大きく分けて二つ。
大企業にスポンサーになってもらうか、ポケモントレーナー同士の対戦で得るか、だ。
スポンサーになってもらった場合、前述したように珍しいポケモンなどを企業の要請に従って捕まえてきて、換金してもらう。
オレはポケモンを集めだしたばかりでまだまだ有名じゃないし、捕まえたポケモンの種類も全然多くないので、スポンサーなどつくはずがない。
さっきも書いたようにお金儲けのためにポケモンを捕まえてくるのはあまりしたくない。
もっぱらオレの資金源は、ポケモントレーナー同士の対戦である。
通常ポケモントレーナー同士のポケモンバトルでは相手のポケモンを奪うことはできない。
ポケモントレーナー同士の場合は、お金をかけて行われる。
奪い合うのは誇りとお金だ。
その金額は、お互い合意の上での額になる。
1000円、2000円では安すぎる。
かといって10000円を超えると高すぎてのってくる人が限られてくる。
大体3000~5000円が相場のようだ。
ポケモントレーナーの数は限られているし、お金がかかっている真剣勝負の世界で、一度負けた相手にすぐさま対戦を挑むようなバカはいない。
ポケモンの対戦では、即座にリベンジしても同じ結果になるからだ。
自然と1日に対戦できる人数は限られてくる。
1日4~5人と対戦できればいい方で、1人も対戦しない日もある。
そんな日は街に滞在していても、さすがに野宿しようかと迷ってしまう時もあるが、何とかホテル泊にしている
明日があるさと自分に言い聞かせて。
念のために言っておくが勝率が5分ではお話にならない。
全勝するくらいの気持ちでなければすぐに資金が底をつきて、旅を続けられなくなってしまうからだ。
お金をかけることがルールで決まっているとはいえ、そんなに気持ちのいいものではない。
相手が大人であれば遠慮は要らないが、自分よりも小さい子であった場合、勝ってしまったら一日中罪悪感に苛まれることになる。
この前、ポケモンをまだ始めたばかりであろう女の子と対戦した。
オレよりも2~3歳年下だったろうか。
お金をかけずにやるか?と聞いたところ、子ども扱いされたくないのか、きちんとお金をかけてやりたいと申し出た。
小さくても、心は立派なポケモントレーナーだ。
感心した。
こっちはコラッタ含めて6匹。
負けるはずがない。
案の定、あっさりと勝たせてもらったが、お金を払うときその女の子は目に一杯の涙を浮かべていた。
なけなしの、恐らくはお小遣いの全てであろう3000円を握りしめながら。
これじゃあその辺のカツアゲか追いはぎと何ら変わらないじゃないか。
ほとんどいじめに近い。
オレが憧れたポケモントレーナー像とは遠くかけ離れている。
ポケモン集めの旅の、その空気を吸うだけでオレはポケモンマスターになれると思っていたのかなぁ。
それ以来、自分よりも小さい子とは対戦していない。
対照的にロケット団は非常に美味しい相手だ。
たまらなく美味しい。
涎だらだらだ。
企業ぐるみでえげつない手を使ってポケモンを集めているという噂なのに、対戦を挑んでくるトレーナーはビビるほど弱い。
というか、お話にならない。
趣味レベルの弱さだ。
あれだけの企業で、どうやったらこんなに弱いトレーナーを雇うことができるのか不思議でたまらない。
だが、金払いは良い。
負けたら100%律儀にお金を払ってくれる。
ロケット団と最初一戦するまでは正直避けていた。
絶対に強いだろうという確信と、こっちが勝っても、何らかいちゃもんつけてお金を払わないだろうと思っていたからだ。
どんな汚い手を使っても勝ちに来るだろうという予想もあった。
が、事実は真逆だった。
汚い手を使うというようなことは決してない。
対戦を始める前こそ、頭の悪そうな使い古された謳い文句をぺちゃくちゃとしゃべってくるが、対戦はフェアプレーそのもの。
清々しいほどに綺麗な勝負を挑んでくる。
捨て台詞も雑魚悪役のまさにそれであるが、それ以上何もしてこない。
美味しすぎる相手である。
最近では、ロケット団を見かけたら積極的に声をかけて対戦を挑むようにしている。
もちろん、掛け金は10000円だ。
フヒヒ、サーセンwww。
本音はもっと高額を掛けたいところなのだが、中々上手くはいかない。
一度50000円掛けたいと申し出たところ、向こうが怪しんでのってこなかった。
それからは不本意ではあるが、10000円で我慢してやっている。
オレのロケット団との対戦勝率は100%で、美味しすぎる相手だ。
まさにカモネギとはこういう相手の事を言うのだろう。
ロケット団については、どんな手を使ってもポケモンを集めるとか、超絶ブラック企業とか言われているが、実は隠れた超ホワイト企業ではないかと睨んでいる。
何でも噂は当てにならない。
将来的に就職してやっても悪くはない。
その時は、ポケモンバトルのいろはを叩き込んで最強集団を作り上げてやる。
そんなこんなで旅を続ける資金が無限に調達できる訳ではないのである。
ポケモン達はポケモンセンターで無料で回復してもらえるし、エサも自分たちで勝手に取って食べてくれるのでエサ代がかからないのが唯一の救いか。
だが、戦闘ではそうはいかない。
少しでもいいキズぐすりを使ってあげたいし、状態異常(毒、マヒなど)を回復するアイテムもそれとは別に必要になる。
ステータスを一時的に上昇させるアイテムも重要だ。
ポケモンを捕まえるのも、今は単なるモンスターボールで事足りているが、今後もっとポケモンのレベルが上がっていったらスーパーボールやハイパーボールを使う必要がある。
もちろん捕まえやすくなる分、高価だ。
自分の食事代や寝泊りする分も最低限必要だし…。
最初は少ない金額でやりくりするのが楽しかったが、ポケモンの数が増えてきたり、マサラタウンを遠く離れてからは不安しかない。
万が一お金が尽きたら、対戦を挑むこともできない。
こんなことならオーキド博士から幾らか借りてくれば良かった。
餞別として少しくらいのお金はくれてもいいようなものなのに。
オレがその辺でのたれ死んだらどうするつもりだ。
はぁ~。
ポケモンマスターへの道は果てしなく険しい。
・31日目
ついに自転車を手に入れた!
これで行動範囲がぐっと広がる。
やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!
この旅を始めて一番嬉しい出来事かもしれない。
ポケモン集めの旅に出たのに、自転車ゲットして喜ぶとはこれいかに?
変なことを口走ってしまった。
今テンションがマジやばい!
やばいよやばいよ~。
もう訳が分からない状態だ。
それくらい嬉しい!
もうこれがあれば世界征服も夢じゃないかも。
言い過ぎた。
一旦落ち着こう。
ふい~。
正直、歩いての旅には限界を感じていた。
マサラタウンを出てまだ一月程度しかたっていないというのに、心が折れそうだった。
とにかく一日に歩く距離が長すぎる。
メタボな人だったら、一か月で4~5kgは痩せるんではないだろうか。
オレも旅立ちの日よりも足回りがたくましくなった気がする。
絶対に体脂肪率は落ちている。
断言できる。
運動そのものは嫌いじゃないから別に良いのだが、問題は街から街への移動に時間がかかりすぎることだ。
以前も書いたが、次の街にたどり着く前に食料が尽きるのではないかと気が気でない。
実際、ハナダシティに着く前には尽きたわけだし…。
餓死してオレの骸がその辺の森に晒されるのだけは絶対に嫌だ。
母さんも悲しむだろう。
親を悲しませるようなことはなるべくならしたくない。
これからは自転車のおかげで生存の確率がぐっと高まる。
いや、下手したらもう食料の心配はしないでいいかもしれない。
移動距離の大幅な増加に加えて、自転車に積める分持っていける荷物も増える!
食料の心配をしないでいいなんて、本当に嬉しい!
素敵な旅が始まる予感しかしない。
オレの本当の旅はこれからだ!
自転車を手に入れるまでは色々と苦労した。
サントアンヌ号のチケットをもらうために、ゴールデンブリッジを渡ってマサキに会いに行き、ハナダシティの泥棒に入られた家の裏から外に出てロケット団と勝負し、6番通りを通ってクチバシティを目指した。
典型的なお遣いイベントだ。
同じ場所を何度も行ったり来たりするのにはさすがに閉口した。
その分、クチバシティでは本当に多くの収穫があった。
サントアンヌ号では多数のポケモントレーナーと勝負でき、資金を獲得できたのもさることながら、船長からはひでんマシン1の「いあいぎり」をいただいた。
ポケモン大好きクラブの会長からは引換券をいただいた。
まさか、この引換券が自転車になってくれるとは。
夢にも思わなかった事態だ。
こういうのを僥倖というのだろう。
ハナダシティまで再び戻るのには全然苦ではなかった。
一度通った道だ。
帰路はそれほど探索は必要ないからだ。
その分時間が短くて済む。
元々、ハナダシティ~クチバシティ間が短かったのも幸いだった。
何より、自転車が手に入るのである。
それまでの疲れは一気に吹き飛んだ。
やった、やった!
念願の自転車だ。
いあいぎりも凄く便利な技だった。
道をふさいでいる木々を切るだけと思ったら大間違い。
野宿時に物凄く力を発揮してくれるのである。
いあいぎりで草原になっている部分の草を切りさく。
それを一か所に固めると、天然のふかふかベッドの出来上がりだ。
大量に積み上げて草と草の間に入る要領だ。
こうすれば背中部分はふかふかで、お腹部分もあったかくいられる。
手ごろな太さの木の枝を切れば、枕になる。
こんなにも便利な技があるなんて。
さらにさらに、ハナダシティから2番道路を戻った所にある建物の中の博士の助手からはひでんマシン「フラッシュ」をいただいた。
これで、洞窟やトンネルの通過も容易になるし、何より夜道の行動が安全になる。
今までは申し訳程度の懐中電灯で行動していたが、危なっかしくて動き回れたもんじゃない。
街から少し離れてしまえば、街灯なんてほとんど届かない。
洞窟は基本的に真っ暗だ。
オツキミヤマトンネルを抜けるときは本当に生きた心地がしなかった。
ほとんど真っ暗で、所々にズバットが飛び交ってるんだもの。
自転車にひでんマシン。
こんなに便利なものが手に入るなんて、上手くいきすぎだ。
これから先もひでんマシンは良い技が入るんだろうか?
嬉しすぎる。
ワクワクが止まらない。
ただ、一つだけ良くわからないのがひでんマシンで覚えた技を忘れることができない理屈だ。
これが自然の摂理ってやつか?
いつかこの理由がわかる日が来るのだろうか。
今は前進あるのみだ。
そうそう、クチバシティでは当然のごとくマチスを撃退したことは言うまでもない。
あまりにもあっさりぶちのめしてしまったので、記録に残すべきか迷ったくらいだ。
ジムリーダーには、一つの属性しか使ってはいけないという鋼の掟でもあるんだろうか。
しかし、技マシンの「10万ボルト」を持っていたのには驚きだ。
タケシもカスミもマチスも、技マシンは異常なまでにいいものを持っている。
ってか、自分のポケモンに使ったら?
もったいぶって、相手に取られるのなら今いる自分のポケモンに使った方が100倍有意義な気がする。
まあ、お蔭で良い技マシンが手に入って、オレはありがたいけど。
とにもかくにも、自転車が入って非常に快適だ。
ポケモントレーナーになったことを後悔している自分がいたけど、何とかやっていけそうだ。
これからの旅にも幸ありますように。
・34日目
いやマジ、オーキドふざけんなよ!
何だよ、シオンタウンのあのポケモンタワーは!
絶対何かいるし!
見えてはいけない霊的な何かが!
憑りつかれたらどうするんだ。
ていうか、心なしか右肩が重い気がする…。
気のせいだといいけど。
触れもしなければ、攻撃もできない。
もちろん向こうから危害を加えられたわけではないが、憑りつかれたらと思うと気が気でない。
オーキド博士も知ってたんなら、教えてくれよ。
面白くなくなるから旅に関する全容はともかく、幽霊が存在することについては教えておいて欲しかった。
苦手なんだよなぁ…。
憑りつかれでもしたらどうしてくれるんだ。
ネクロマンサーの一人や二人、あんたが手配してくれるんだろうな?
マジで憑りつかれてないよね?
ホント勘弁してほしい。
というかマジでオーキド博士ありえないんですけど。
最近気づいたのだが、ゼニガメの生息分布図がポケモン図鑑に載ってない。
これはつまり、希少種ということだ。
その辺では滅多に捕まらないということを意味している。
いや、もしかしたら絶滅危惧種でその辺には全く居ないのかもしれない。
ライバルが連れて行ったヒトカゲも生息地域が載ってない。
恐らくはフシギダネも同じだろう。
最初こそ、こんな希少種持ってるなんてさすがはオーキド博士!って思っていたけど、最近なんだかその気持ちが揺らいできた。
そんじょそこらでは手に入らない希少種を3匹も持っているんだから、絶対何か悪いことをやっているに違いない。
裏の組織と繋がっているとか。
自分を育てた or 自分の恩師 or 自分の最大の理解者 or 自分の肉親が実は黒幕だったというのは良くある話だが、それだとあまりにも小説や漫画じみているか…。
黒の組織の黒幕ではないかと噂されていた某発明博士も、公には否定されていたしな…。
現実世界ではそんなことはほとんどないだろうから、オレの考えすぎか。
黒幕云々は抜きにしても、そんな希少種を一匹限定で授けるのはいかがなものか。
フシギダネどうやって捕まえりゃーいいんだ?
舐めてんの?
死ぬの?
「ポケモン図鑑を完成させる旅に出るのじゃ!」
とかなんとかエラソーなこと言ってたけど、いやいや一匹あんたが持ってるんですけど?
フシギダネもよこせよ。
完成させようがないじゃん、ポケモン図鑑。
なりようがないじゃん、ポケモンマスター。
なにこれ、イジメ?
はあ~。
憂鬱だ。
イワヤマトンネルを通っていた時は凄いルンルン気分だったのに。
フラッシュが早速役に立ってくれたからだ。
暗いトンネルが一瞬にして明るくなり、快適に通過できた。
こんなに旅が楽しいなんて思いもしなかったのに。
シオンタウンにつくなり、いきなりテンションがた落ちだ。
何だか最近気分の浮き沈みが激しい気がする。
ひょっとして、そういう類の霊に憑りつかれた?
なんだかポケモン集めの旅に出てから、情緒不安定になっているような…。
こういう風に冷静に自己分析できているから、まだ大丈夫か。
大丈夫だよね?
憑りつかれてないよね?
憂鬱だ…。
余談だけど、イワヤマトンネルに留まっているポケモントレーナー達は迷子じゃないよね?
何が悲しくてあそこにずっといるのかはわからないけど、動く気配が全くなかった。
対戦後もずっとその場にいたし。
ひょっとして、フラッシュ使えないとか懐中電灯の電池が切れてにっちもさっちもいかない、なんてことないよね?
一か月後変死体で見つかる!なんて止めてほしい。
自分が見捨てたみたいで良い気はしない。
ポケモントレーナーは全てにおいて自己責任の世界なので、本人たちが悪いと言ってしまえばそれまでなのだが。
何より、今のオレには彼らを慮る余裕がない。
ポケモンタウンのことを考えると憂鬱で仕方がない。
・41日目
今現在、シオンタウンのポケモンタワーの目の前にいる。
え?
一週間もずっとうろうろしていたのかって?
失敬な!
うろうろしていたのは5日間くらいで、残りの2日はタマムシシティに行っていたんだ。
タマムシシティにあるロケット団のアジトでサカキを倒したら、シルフスコープをくれた。
どうやらこのスコープでポケモンタウンの正体不明の敵の正体が見えるらしい。
なんでこんな余計なものを持っているんだ…。
お蔭でポケモンタウンを調査しないと行けなくなったじゃないか…。
うう…。
憂鬱だ…。
そんな訳で、5日間ほどポケモンタウンの前をウロウロしている。
なかなか中に入る決心がつかないからだ。
敵の姿が見えないことほど怖いものはないが、今まで見えなかったものが見えるようになるのも同じくらい怖い。
単なる透明人間だったらマシなのだが、ポケモンタウンの場合は明らかに幽霊のそれだしなぁ。
血まみれになっているジジイや、はらわたが飛び出たババアとか、超でけぇ鎌持った不気味なオッサンとかが見えたらどうするんだ。
うー、ブルブル。
想像しただけでも身震いしてしまう。
とはいえ、ずっとウロウロしている訳にもいかない。
一日も早くポケモンマスターになるためにも、こんなところで時間をつぶすわけにはいかない。
意を決して、ポケモンタウンに入ることにした。
一応いつでも逃げれるように、退路だけはしっかり確保しておく。
鬼が出るか蛇が出るか…。
比喩だけど、鬼や蛇の方がまだいいな。
蛇だったらアーボだろうから、何の問題もないし。
いや、やっぱり鬼も嫌だな…。
捕まえられそうにないし、オレの可愛いポケモンがこん棒とかでタコ殴りにされたらたまったもんじゃない。
ええい、ままよ。
ということで、ポケモンタウンの捜査開始だ。
何卒、憑りつかれませんように。
あ、そうそう、忘れないうちに言っておくけど、タマムシシティのジムリーダーであるエリカは当然の如く倒したことだけは付け加えておく。
全くもってお話にならない相手だったことは言うまでもない。
ポケモンタウンの調査に比べたら、ジムリーダーの相手は100倍楽だ。
金払いもいいし。
技マシンくれるし。
良いカモだ。
鴨が葱を背負って来るとはこのことだ。
いや、彼らはジムにずっといるので、鴨が葱を背負って居ると言った方が正しいか。
・42日目
結論から言うと、ポケモンタワーの正体不明な物質の正体はポケモンだった。
やれやれだ。
ポケモンとわかれば話は別だ。
ゴースやゴーストはもちろん、カラカラも非常に可愛らしい。
このカラカラは死に別れた母親の頭蓋骨を被っており、思い出しては泣き出すという非常に悲しい運命のポケモンだ。
シオンタウンの少女が言うには、母親であるガラガラはロケット団によって殺されたらしいが、これはかなり眉唾ものだ。
なぜなら、ロケット団がガラガラを殺したところで、何もメリットがないからだ。
ポケモンタワーには相当数のカラカラの幽霊がさまよっていたが、そんなに大量のガラガラが殺されたなんて話、聞いたこともない。
ガラガラ柄のバッグやコートなんて見たこともないし。
全てのカラカラが母親の頭蓋骨を被っているので、ロケット団がその全ての母親を殺したと考えるのはどう考えても無理がある。
明らかに設定的に破綻している。
むしろ、少女の分際でロケット団のそんな公になってない悪事を知っている方が怪しい…。
あの少女も幽霊か何かじゃあるまいな。
憑りつくのだけは勘弁してくれ。
とにもかくにも、ポケモンタワーは難なく攻略できた。
幽霊の正体見たり枯れ尾花ってやつだ。
昔の人は良いことを言うもんだ。
後編に続く👇
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