シャア専用ねこのブログ

鳥取の宣伝をメインに、日々の雑感や体験、出来事などをてきとうに記載

ポケモントレーナー・サトシの苦悩の日々 サトシの手記後編

どんもっす。

 

サトシの手記後編です。

前編はこちら👇

 

syaa-sennnyou-neko.hatenablog.com

 

 

・44日目

16番道路でひでんマシン2「そらをとぶ」を手に入れた!

ひこう属性のポケモンに覚えさせたら、一度行った街に瞬時に戻れるというとんでもない技だ!

RPGでいうところの瞬間移動呪文ル〇ラと同じ効力だ。

飛空艇やドラゴン、気球、魔法のじゅうたん、RPGには地形に影響されない乗り物が不可欠だが、オレもついに手に入れることができた!

現実世界でこんな夢みたいな技が使えるなんて!

凄い!凄い!凄い!凄い!凄い!凄い!凄い!凄い!凄い!凄い!凄い!凄い!凄い!

やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!

 

早速オニドリルに覚えさせて使ってみた。

まずはマサラタウンだ。

ふわっとオニドリルが浮かび上がったかと思いきや、瞬時に上空へ飛び立った。

うわー! 凄い! 

今は上空2000mくらいだろうか。

空からの景色がこんなにも雄大だったなんて!

風が物凄く気持ちいい。

 

ポケモンマスターになれれば、いつかは空も飛べるはずって思ってたけど、今日はその夢がかなった日だ。

ポケモン集めの旅に出て、今までで一番嬉しい瞬間だ。

きっとこれからもこんなに嬉しいことはないだろう。

 

ほどなくしてマサラタウンに着いた。

しばらくはマサラタウンには戻れないだろうと踏んでいたが、こんなにも早く、こんなにも簡単に帰れるなんて夢にも思ってなかった。

 

オーキドのジーサンに会いに行ってやったら、

「まだこんなところをウロチョロしておるのか!」

とか、

「まだこんだけしかポケモンを捕まえておらんのか!」

と老人特有の嫌味にも似た説教をかましてきたが、無視してやった。

全然聞こえませーん。

うけけけけ。

今のテンション上がっているオレには何を言っても無駄だぜ!

 

ってか、こんだけしかポケモン捕まえてないのか!とか言ってるけど、一匹はあんたが持ってるからね?

念のため。

オレが持っているポケモンの総力をけしかけて叩き潰してやってもいいんだぜ?

力づくでフシギダネ奪ってやってもいいんだからな。

今オレがそれをしないのは、いい気分に浸っているからだ。

言葉には気を付けないと、ただでさえ残り少ない寿命をさらに縮めることになるから気をつけな。

 

おっとっと。

こんなヒヒじじいの相手をしている場合ではなかった。

マサラタウンに帰って来たのは、母親に会うためだ。

明日をも知れないポケモン集めの旅にでて40日以上全く連絡を取ってない。

さぞかし心配しているだろう。

第一声は何にしよう?

ただいま、だとありふれてるか。

久しぶり、だとあまりにも他人行儀か。

 

と、実家の前でうだうだやっていたら、不意に玄関のドアが開いた。

「サトシ? サトシなの? いつ帰って来たの?」

一瞬驚きの表情を見せた母さんは、即座に満面の笑顔になってオレを迎えてくれた。

「痩せたね…。早く中へ入りなさい」

母さんの顔を見たときは不覚にも涙が出そうになった。

そしてオレの変化にいち早く気づいて、それ以上深くは言わない優しい性格にも。

 

確かに、オレはかなり痩せた。

ポケモン集めに奔走し、動き回っている。

食事も満足に取れない日々が続いたこともある。

自転車を手に入れたとはいえ、街から街の間は基本的には野宿だ。

最近鏡で自分を見ると、頬は痩せこけ、あばらは浮いて、目の下にはクマが浮き出ているのがわかった。

そんなオレを見ても、深く追求してこない母親の懐の深さに深く感謝した。

 

その日の晩は、オレの大好物が食卓にズラリと並んだ。

いつの間にこんなに食材を集めたのだろうか。

オレが帰って来たのは夕方で、オレが帰ってきてから母さんは一度も家を出ていない。

つまり、オレがいつ帰ってきてもいいように、常にオレの好きな食材を用意してくれていたということだ。

ポケモン集めの旅に出たときは、死さえ覚悟しないといけない旅だと思っていたが、こんなにも愛されていることを改めて実感して、死ぬわけにはいかないと決心を新たにした。

まだ何も親孝行をしていない。

このまま何も成さずに死んでしまったら、これ以上の親不孝はないだろう。

母さんを悲しませないためにも、今後はちょくちょくかえって安否を報告しよう。

 

その日はごちそうを満腹になるまで食べ、久々に自分の布団で安眠できた。

うん、やっぱり実家は最高だ。

 

次の日以降は、ニビシティ、ハナダシティ、クチバシティ、タマムシシティと順繰りにそらをとぶで訪れた。

訪れたというよりは、冷やかしにいった感じだ。

それぞれの街のジムリーダーは相変わらずの顔ぶれだった。

もちろん、持っているポケモンも。

オレにコテンパンにされたんだから、いい加減補強するなり、ポケモン入れ替えるなりすればいいのに。

彼らの意固地っぷりには頭が下がる。

もちろん、遠回しにけなしていることは言うまでもない。

 

いやぁ、最高だ! 

そらをとぶ

何が最高かって、これでもう餓死することが100%無くなったことだ。

今までの餓死率を感覚で適当に表すと、

徒歩:30~40%

自転車:10%

そらをとぶ:0%

といったところだ。

餓死だけではない。

致命的なケガをしたときも、即座に街に帰れるのは大きい。

迅速な救急対応が可能になるので、ぐっと生存率が上がる。

 

そうそう、トイレの心配も今後はしなくていい。

思う存分、街の水洗トイレが使用できる。

非常に嬉しい。

野原でするのにも慣れてきていたのだが、小はともかく大はかなり無防備になってしまうのが悩みの種だった。

トイレットペーパーを持ち歩く必要もなくなる。

一度、トイレットペーパーを忘れてしまったことがあった。

仕方なくその辺の葉っぱで拭こうとしたら、マダツボミだったのにはびっくりした。

驚かせてしまい、身を守るためにオレ自身に攻撃してきた。

危うくはっぱカッターでオレの大事なポケモンをちょん切られるところだった。

あれ以来、トイレットペーパーは必ず持ち歩くようにしているが、今後はこんな心配は一切いらない。

こんなに良い技はない。

 

技を覚えているポケモンが気絶したらどうなるのかって?

心配ご無用。

ひでんマシンはポケモンが気絶していても使えるのだ。

どういう理屈かはわからないが、ポケモンが気絶していても技を選択したら発動する。

フラッシュはまだわかるが、いあいぎりが発動した時は驚いた。

 

ということで、今まで頭を悩ませていた色んな物事が一気に解決だ。

やった!やった!

この後の旅も、このまま上手くいきますように。

 

 

・55日目

ついにやってしまった…。

自分の信念を曲げ、自分の気持ちに嘘をついて、持っているポケモンを総入れ替えした。

なぜか?

到底勝てない相手がでてきたからだ。

 

その相手の名はヤマブキシティのナツメ。

エスパー軍団4匹で固められた強敵だった。

そもそもエスパー軍団には弱点というものが存在しない。

さらに自己再生、サイケこうせん、催眠術といった多彩な技を繰り出してくる。

個々のポケモンのレベルもかなり高かった。

フーディンなんて見たのは初めてだった。

 

これまでのジムリーダーは

・明確な弱点が存在する

・所有ポケモンが少ない

という点で、ジムリーダーとしては破格の弱さだった。

だが、ナツメは違った。

本物だった。

 

こっちは6匹で挑んだのに、最後のフーディンを引きずり出したときは、こっちも最後の一匹だった。

フーディンの攻撃力は凄まじく、一ダメージも与えることなくこちらのポケモンは完膚なきまでに叩きのめされた。

完敗だった。

 

その後、レベルを上げて何度か挑んだが結果は常に同じだった。

このまま勝てるレベルになるまで現在のポケモンのレベル上げを行うか、エスパー軍団に勝てるメンバーに入れ替えてチャレンジするか…

 

オレが選んだのは後者だった。

最初に捕まえたポケモンであるカメールゼニガメから進化)、ラッタ(コラッタから進化)、オニドリルオニスズメから進化)、ピカチュウには格別の愛着があった。

皆オレに物凄く懐いてくれていた。

必ずこいつらと一緒に、チャンピオンリーグを勝ち上がり、ポケモンチャンピオン、ポケモンマスターになると心に誓ったのに…

もう一つ、愛着が沸いている意外にポケモン入れ替えを行わない重大な理由があるのだが…

とにもかくにも、ポケモンを入れ替えてしまった。

 

オレなりに総入れ替えを正当化する言い訳はある。

最近自軍のポケモンのパワー不足を感じ始めていた。

特に顕著になったのがポケモンタウンだった。

ゴースト相手に、こちらの物理攻撃はほとんど効かなかった。

そして今回のナツメ戦。

今後ももっともっと強いポケモントレーナーが現れるのであれば、今現在のポケモンで勝ち抜くことは難しいだろう。

勝てるようになるまでレベル上げをしてもいいが、時間がかかりすぎる恐れがある。

一刻も早くポケモンマスターにならなければならないオレにとって、どれだけの時間がかかるか分からない選択はリスクが大きい。

 

オレは仕方なくポケモンを入れ替えることにした。

弱点が少なく、それでいて今後の活躍が期待できるそれぞれの属性の、現時点での最強と思われるポケモンで固めた。

 

結果、ナツメに勝てた。

だがしかし、勝利と引き換えに大切な何かを失った気持ちだった。

胸にぽっかりと穴が開いたような感じ…。

 

やはりオレは今まで一緒苦楽を共にしたポケモンたちを愛していたのだ。

チャンピオンロードを勝ち上がって、ポケモンマスターになるまではあいつらと最後まで行動していたかった。

旅の最後まで苦楽を共にしたかった。

ナツメを倒すまでは気づかなかったが、ナツメを倒してそのことに気づいてしまった。

いや、本当はナツメと対戦する前から気づいていたのだが、気づいていないふりをして自分の行動を正当化させた。

オレは自分の気持ちに嘘をついたのだ。

目的を達成するために…

 

もう後戻りはできない。

取り返しはつかない。

これからは入れ替えたポケモンで勝ち上がっていくだけだ。

何も間違ってはいない。

そう割り切ったはずなのに…。

この虚しさは何だろう。

 

思えば何時の頃からか、ポケモン集めを全く楽しいとは思わなくなっていた。

ほとんどノルマと化している。

ポケモン集めの旅の最初の頃は心底面白かった。

新しいポケモンが出るたびにワクワクした。

 

レベル上げの為に、野生のポケモンをやっつけるときも、躊躇していた。

野生のポケモンを痛めつけて、死なないだろうか。

傷薬を置いていった方がいいのではないか。

当初はそんなことを考えていたが、最近そんなことを考えることはない。

 

新しいポケモンは、図鑑を完成させる為のノルマだ。

もう既に捕まえたことのあるポケモンは、自ポケモンのレベルを上げるための格好の相手だ。

いつの間にかそんな風にしか考えられなくなっていた。

気づけば、ポケモン集めを全然楽しいと思わなくなっていた。

 

オレが目指したポケモントレーナーとはこんなものだったのか?

オレが夢見たポケモンマスターへの道はこんなものだったのだろうか?

一年前のオレが今のオレを見たらなんていうだろう。

 

これから進む先に、その答えが待っているのだろうか。

 

この先に何が待っているのか、それはわからない。

今はただ前に進むだけだ。

 

 

・59日目

今日はセキチクシティのサファリパークに来ている。

珍しいポケモンを捕まえるためだ。

ポケモン総入れ替えをして、しばらくは気分がふさぎ込んでいたが良いリフレッシュになりそうだ。

 

ここでは、石を投げてポケモンを弱らせる。

そこで、サファリパーク限定のモンスターボールポケモンを捕まえる寸法だ。

通常では滅多に会えないポケモンもいるから、楽しみだ。

 

…数時間後

 

おかしい。

ラッキー、ガルーラ、ケンタロスといった珍しいポケモンがいるはずだが全然会えない。

いや、物凄く低頻度ではあるが会えてはいる。

問題は逃げた後だ。

どこにも見当たらない。

3匹ともとてつもなくでかいので、その辺にいたらすぐにわかるはずなのだが、逃げ出した後は影も形も見当たらない。

つまり、一度出会って逃げられた後、再度出会うことがなかなかできないということだ。

これは一体どういうことだ?

 

そもそもエンカウントする際も、実際に出会う寸前まで近くにいることさえわからない。

このサファリパークは一体どういう原理なんだ?

普通にだだっ広い草原で、ポケモンが逃げ隠れできるような場所はない。

ラッキー、ガルーラ、ケンタロスは巨体なので、その辺をうろついていれば簡単に見つけられるはずなんだけど…。

全然見当たらない。

いい加減イライラしてくる。

 

ストレスが溜まる要因になっているのが、こいつらを捕まえるのが非常に難しいことだ。

出現率が低いのは百歩譲って我慢できるが、さらに捕まえずらいのはストレスが溜まって仕方がない。

いきなりモンスターボールを投げても100%捕まえることができない。

かといって、石を1~2回投げただけですぐに逃げ出してしまう。

なんなんだ…

 

リフレッシュしに来たはずが、逆にストレスをためる結果になってしまった。

入場料として高額な値段ふっかけやがって。

珍しいポケモンは一向に捕まらないじゃないか。

こんなもん、ほとんど詐欺だろ。

このサファリパークもオレがポケモンマスターになったら、いずれは叩き潰してやる。

オーキドのジジイの次だな。

楽しみに待っていやがれ。

 

ということで、全然リフレッシュしなかった。

仕方なく先に進むか。

そのうち、気分も晴れてくるだろう。

 

 

・70日目

この数日間、色々なことがあった。

特に大きな変化だったのが、フリーザー、サンダー、ファイヤーという伝説ポケモン3匹を捕まえることができたことだ。

 

やった!やった!やった!

 

伝説ポケモンの攻撃力は凄まじく、危うくオレも殺されるところだった。

通常ポケモンがトレーナーに攻撃することはありえないが、伝説ポケモンともなると話は別だ。

攻撃範囲がとてつもなく広く、巻き添えをくらいそうになったのだ。

フリーザーはふぶき、サンダーはかみなり、ファイヤーはゴッドバードと、天候すら操る伝説ポケモン達の攻撃に、危うくオレ自身がお陀仏になるところだった。

ふぶきやかみなりなんて、どうやって避けろというんだ。

滅茶苦茶な技だ。

 

ラッタの「いかりのまえば」なんていう感情むき出しの超原始的な手段で相手を攻撃していた頃が懐かしい。

 

それだけに捕まえた時の嬉しさも一入だ。

なんていったって伝説ポケモンだ。

苦労に見合うだけの強さと価値がある。

生息地も不明だから、ひょっとして今現在この世界で所有しているのはオレだけではないだろうか。

これでオーキドのジジイにデカイ顔されないで済む。

やった!やった!

 

当然自分のパーティの半分は伝説ポケモンフリーザー、サンダー、ファイヤーだ。

伝説でも何でもない、手持ちの弱いポケモン達は用済みだ。

とっととポケモンセンターに預けてしまおう。

 

ナツメ戦以降、ここに至るまでも、そして伝説ポケモンと戦うためにもパーティ内のメンバーはその時に応じて変えてきた。

どんどん強いメンバーをそろえていった。

結果、旅が非常にスムーズに進むようになった。

ラブ&ピースなんて嘘っぱちだ。

ポケモン集めは愛情ではなく、効率重視でなくては。

 

 

・82日目

この旅もいよいよ大詰めを迎えたようだ。

全ての街のジムリーダーは倒して、バッジは全て手に入れた。

伝説ポケモンも手に入れた。

こいつらが入ってからは、トレーナー戦も負けなしだ。

 

そして、オレはついにセキエイこうげんへたどり着いた。

いよいよポケモンマスターになるために、ポケモンリーグの四天王に挑戦する日が来た。

四天王戦は一度始まったらもう引き返せない。

つまりポケモンマスターになるには4連戦しないといけないのだ。

途中でポケモンセンターに回復に戻ることはできない。

ポケモンを入れ替えることももちろん不可能だ。

今現在パーティを組んでいるポケモンと手持ちの道具だけが頼りだ。

 

…冷静に考えると、四天王側滅茶苦茶有利だな。

ポケモンリーグの頂点に立つ者として、それだけハンデを持った状態で闘うのはいかがなものか。

 

初戦のカンナは強敵だった。

氷とエスパータイプを多用してきた。

以前の俺なら負けていたかもしれない。

だが、今のオレには伝説ポケモンを含めて6匹の心強いポケモンがいる。

負ける訳がない。

特に、伝説ポケモンは氷、雷、炎と属性がバラバラなのがありがたい。

サンダーとファイヤーはカンナ戦で大いに活躍してくれた。

頼もしい奴らだ。

 

二戦目のシバは岩タイプと格闘タイプという力押しのパーティだ。

しかし、ここはフリーザーほぼ一匹でいけた。

格闘タイプは飛行に弱いからだ。

フリーザーはふぶきという恐ろしく強い技を持っている。

負ける訳がない。

唯一の懸念は、伝説ポケモンたちの攻撃力は凄まじいのだが、使える回数が多くないことだ。

なので、四天王戦は試合の合間に道具でポケモンのケアをしてやる必要がある。

回復用の道具は大量に持ってきた。

絶対に大丈夫だ。

 

3戦目のキクコはゴーストや毒を中心とした手ごわい相手だ。

一匹目のゲンガーからしてかなり強い。

何せ、物理的な攻撃が全く効かない。

ラッタやオニドリルといったポケモンたちだったらなすすべもなくやられてしまうだろう。

が、こっちにはエスパータイプは強いポケモンを入れている。

エスパーはゴーストタイプに対する唯一と言っていいほどの対処法だ。

もちろん、伝説ポケモンたちの攻撃も有効だ。

キクコも難なく撃破できた。

それにしても、なぜパーティ内にゲンガーとゴーストが混在しているのだろうか?

ゲンガーはゴーストの進化形だ。

当然、ゲンガーの方が強い。

ゴーストを入れるのであれば、ゲンガーにすればいいのに。

ゲンガーがいるパーティでゴーストを1匹いれるという編成は謎すぎる。

ゴーストで進化を止めるメリットがないからだ。

キクコもようわからん。

 

四天王最終戦はワタルだ。

こいつに勝てば、オレがポケモンマスターだ!

凄い胸が高鳴る。

カンナ、シバ、キクコの強さを考えると、ワタルも撃破不可能ではないだろう。

ワタルだけ突出して強いということはさすがに考えにくい。

ついにオレも夢のポケモンマスターだ!

 

とはいえ、やはりワタルは強かった。

ワタルのパーティ編成は、ドラゴンタイプがメインだった。

伝説ポケモンに匹敵する強敵だ。

ドラゴンタイプの弱点は氷タイプなのでフリーザーでいけると思っていたが、向こうの攻撃力も尋常ではなかった。

中でも破壊光線は別格の強さだった。

さすがに、ポケモンリーグの頂点に立つ男だ。

だが、こっちもここまで勝ち上がってきたポケモンたちだ。

敗れる訳にはいかない。

ポケモンを入れ替え、道具を駆使して、総力戦の末にワタルに勝った!

やった!やった!やった!

これでオレがポケモンマスターだ!

子供のころから夢見た、全ポケモントレーナーの頂点に立ったんだ!

ワタルのポケモンカイリューが3匹いたら確実にこっちが負けていただろう。

だが、ワタルの編成はカイリュー1匹にハクリュー2匹。

カイリューハクリューの進化形だ。

ハクリューで進化を止めておくメリットがあっただろうか。

どうせなら3匹ともカイリューにしていればいいのに。

ワタルと言い、キクコといい、何を考えているんだろう。

最後まで進化させないことが流行っているんだろうか?

謎だ。

 

「おめでとう。君がポケモンリーグのチャンピオンだ」

おっと、勝利の余韻に浸っていたいところなのに、ワタルがごちゃごちゃと何か言い出したぞ。

勝った今となってはこんな奴の言葉なんて何一つ聞く必要はない。

うひゃひゃひゃひゃ。

まあ、敗者の弁を聞いてやろう。

はいはい、拝聴致しますよ、っと。

 

「と言いたいところだが、君はもう一人闘わなくてはいけない」

 

?????????????????????

 

「君よりも先に我々を倒した人間がいる。その名前は…」

 

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

そんな… まさか…

ワタルが言い終わる前に、オレは駆け出していた。

 

そんな訳がない!

オレは旅に出て、考えうる限り最速の道を選んできたつもりだ。

勝てない相手が出てきたときは、時間よりも効率を優先して、ポケモン総入れ替えまで行った。

そんな俺より早く、あいつが先にたどり着ける訳がない!

そんなバカな話があってたまるか!

 

オレはワタルの言葉をほとんど無視して、ワタルの後ろにあるドアに駆け寄って、体当たりにも近い勢いでドアを開けた。

 

そこにいたのは…

 

「ああ… ああ… やっぱり… おまえか…」

変な言葉が自然に漏れた。

 

ライバルだった。

嫌な予感が当たった。

 

そこにいたのは紛れもない、同じ日に旅立ったライバルだった…。

 

 

・ライバル戦後

結論から言うとライバルには勝った。

今現在は俺が全ポケモントレーナーの頂点に立つポケモンマスターだ。

 

…でも、この虚無感は何だろう。

憧れのポケモンマスターになれたはずなのにー

少しも嬉しくない。

 

理由はわかっている。

ライバルに先を越されてしまったこと、そしてそのライバルがほとんどポケモンの入れ替えを行っていなかったからだ。

ここに来るまで、至る所でライバルはオレに戦いを挑んできた。

その度に撃破していたが、ずっと気になっていたことがある。

ライバルは極端にポケモンの入れ替えを行っていなかったことだ。

初期のヒトカゲやラッタといったポケモンが入っている。

その後冒険の中で多少は入れ替えを行ったみたいだが、途中からは極端に変わることはなかった。

 

それに比べて、オレは…

 

オレは効率を優先して、ポケモンの入れ替えを行った。

ナツメに負けて以来、もはや四の五の言っていられる状況ではなかった。

より強いポケモンを捕まえては入れ替えて…

いつしかポケモンに対する愛着など消え去っていた。

 

効率を優先した入れ替えには理由がある。

ライバルよりも早くポケモンマスターになりたかったからだ。

事あるごとに絡んでくるライバル。

このポケモン集めの旅も常にオレよりも一歩早く次の場所へと到達していた。

対戦ではオレが常に勝利していたのに…

そんな奴に、最大の名誉であるポケモンマスターの称号を得る勝負で、負けるわけにはいかない。

 

それはオレにとって何よりも優先されるものだった。

ポケモン達との友情よりも。

 

にもかかわらず、ライバルに先を越されてしまった。

確かにポケモンマスターになれることは、ポケモントレーナーにとって最高の栄光だろう。

しかし、オレの場合、ライバルより先になれなかったら、そんなものはほとんど無価値と言っていいものだった。

 

そしてオレはその競争に負けた。

 

憧れのポケモンマスターになれたはずなのに。

ちっとも嬉しくない。

この胸にぽっかり空いた感じは何だろう。

 

何だか、無性にあいつらに会いたくなってきた。

旅の半分以上を共に戦った初期ポケモン達。

初期の、餓死すら覚悟した苦行の旅、その苦楽を共にしたあいつら…。

 

今、あいつらはポケモンセンターに預けてある。

会いに行ったら、あいつらはまた懐いてくれるだろうか…

会いに行く資格が、今のオレにあるのだろうか…

 

 

・その一か月後

オレは今、ポケモンマスターの座を辞退して自由気ままなポケモン集めの旅をしている。

 

ポケモンマスターの座に一切の価値を見出せなくなった俺は、ワタルに譲って旅に出た。

そして、初期のポケモン達に会いに行った。

久しぶりにオレの顔を見たあいつらは…

 

ポケモンボールから出してあげるや否や、オレの胸に飛びこんできてくれた!!

あいつらは以前と変わらず、オレに懐いてくれたんだ。

あまりに嬉しくて、涙があふれた。

そう、オレが目指した真のポケモントレーナー像はこれだったはず。

ポケモン達を愛し、ポケモン達に愛される、そんなポケモントレーナーだ。

目先の利益を追い求めて、勝利に目がくらんだオレはバカだった。

こんな簡単なことも分かっていなかった。

 

この世界にポケモンは150匹いる。

一度に持ち歩けるポケモンの数は6匹までだ。

全てのポケモンを平等に愛することは不可能かもしれない。

それでも、ずっとポケモンセンターに預けているのは忍びない。

あいつらも、大自然で思いっきり遊びたいに違いない。

一部例外はいるけど。

 

そんな訳で、今は再びポケモン集めの旅に出ている。

というよりも、ポケモンの旅だ。

色んなポケモンと色んな旅をしている。

同じ場所でも連れているポケモンが異なれば、見えてくる風景も不思議と変わってくる。

こいつらも普段自分の生息地とは違う場所に来たら、最初こそ驚いているがすぐにはしゃぎだしてくれる。

この旅に出て本当に良かった。

 

今は強さや属性に拘らず、その時連れていきたいと思ったポケモンと一緒に旅に出ることにしている。

なるべく長期間ポケモンセンターに預けられるポケモンがいないように。

以前のノルマと化したポケモン集めの旅と違い、余裕があるからかポケモン達の色んな側面が見れてものすごく嬉しい。

 

ポケモン達もさらに懐いてくれて、旅に連れていこうとすると大はしゃぎだ。

これこれ、ポケモントレーナーはやっぱりこうでなくちゃ!

これがポケモン集めの醍醐味って奴だ。

 

これから先のポケモン集めの旅に多くの幸がありますように!

 

 

・エピローグ -数か月後ー

ポケモンを150匹集め終えた後オーキドのジジイの研究所に立ち寄ったら、世界には500匹を越えるポケモンがいるとか言い出しやがった。

 

………このジジイだけはいつか必ずヤッタる。

 

おわり