かぐや姫の冷笑 本当は「黒い」竹取物語
どんもっす。
日本昔話シリーズその②
かぐや姫がリアルにいたら、多分こんな感じ👇
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どうも、初めまして。
ワタクシ、かぐやと申します。
なんでも、竹取物語は日本最古の物語と伝えられ、「物語の祖(おや)」と言われているのだとか。
そのかいあって、ワタクシ日本中に名が知れ渡っていると自負しております。
そうそう、あの桃太郎様と同様に。
桃太郎様と言えば、あのお方は桃からお産まれになったとか。
それで桃太郎とはなんと安直なネーミングでしょうか。
ええ、皆さまご存知の通り、ワタクシは竹から産まれました。
桃太郎様と同様の命名ルールであれば、ワタクシ「竹子」になっていてもおかしくありませんでした。
この点については、ワタクシを見つけてくださった翁と媼に大変感謝しております。
「かぐや」
なんと素晴らしいセンスでしょうか。
現代でも十分に通用しそうなセンスに心の底から感謝しております。
もしも「竹子」というなんのヒネリもない名前を付けられていたかと思うと…ぞっといたしますわ。
そう言えば、お聞きしたところによりますと現代ではキラキラネーム?というものが流行っているのだとか。
何時の時代も名前というものは親も子も頭を悩まされるものなのだと実感しております。
それにしても桃太郎て。
なんて安直、ぷぷっ。
…失礼いたしました。
ワタクシの昔話を少しさせていただきます。
あれは、ワタクシが翁と媼に拾われて数か月が経った頃でしょうか。
絶世の美女という噂を聞きつけて、五人もの殿方が次々と求婚してきたのは。
ええ、ええ。
大変厚かましい方々だったと記憶しています。
このワタクシに求婚するなんて…
鏡を見たことがあるのかしら。
ああ、あの時代はありませんでしたわね、鏡。
水たまりに写った自分の顔を見たことがないのでしょうか。
はい、ワタクシ全くお仕えする気はありませんでしたので、それぞれの殿方に無理難題を出させていただきました。
「仏の御石の鉢」「蓬莱の玉の枝」「火鼠の裘(かわごろも、焼いても燃えない布」「龍の首の珠」「燕の産んだ子安貝」を見つけてくることができれば、求婚にお応えいたします、と。
お題を出したワタクシでさえ引いてしまうような、何が何だかわからない物を探しに、皆さま旅立たれました。
どこにあるのか、そもそも本当に存在するのかどうかわからない物を探すために、命の保証もない旅に…。
そんなにワタクシとエッチなことをしたかったのでしょうか。
殿方の欲望とは本当に業が深いものでございます。
はい、折角ですからワタクシが出した無理難題を一つ一つ紹介したいと思います。
少しだけお付き合いくださいませ。
最初は石作皇子にお願いした「仏の御石の鉢」でございます。
これはお釈迦様が終身使用していた鉢です。
お釈迦さまは実在したみたいですので、これが一番入手できる可能性が高かった物ではないでしょうか。
しかし、お釈迦様がいたのはインド。
ここは遠い日本。
あの時代に無事にインドまで行って帰ってくるのはほぼ不可能でございます。
仮に本物の鉢を持って帰って来たとしても、お釈迦様の物だと証明できなければ何も意味がありません。
どうやってお釈迦様の物だと証明するのでしょう?
あの時代、DNA鑑定もないのに?
案の定、石作皇子はどこぞの偽物の鉢を持って帰ってきましたので、突っ返してやりました。
このお方は諦めが悪く、何度も言い寄ってきましたので本当に気持ちが悪うございました。
え? どうして偽物だとわかったのかって?
簡単でございます。
私が認めなければ、例え本物であってもそれは偽物です。
車持皇子にお願いしましたのは「蓬莱の玉の枝」でございます。
これはもう存在そのものが怪しいものでございます。
蓬莱の玉の枝とは、根が銀、茎が金、実が真珠の木の枝となっています。
こんなもの、あるわけがないではないですか。
現代風にいうと、「ダイヤモンドの指輪の木」を探すようなものです。
案の定、車持皇子は良く似せた偽物を持ってきましたが、ワタクシの目は誤魔化せません。
突っ返してやりました。
あのお方は、その偽物の玉の枝を作るために協力してくれた職人の方々に報酬を払っておらず、あの後フルボッコにされたとか。
いい気味でございます。
え? どうして偽物だとわかったのかって?
簡単でございます。
私が認めなければ、例え本物であってもそれは偽物です。
右大臣阿倍御主人にお願いしましたのは「火鼠の裘(かわごろも、焼いても燃えない布」でございます。
右大臣阿倍御主人も偽物を持ってきていましたね。
火をつけてやったら、ものの見事に燃え尽きてしまいました。
あの時の、右大臣阿倍御主人の顔ときたら。
傑作でございました。
皆さまにもお見せしたかったですわ。
え? もしも燃えなかったらどうしたのかって?
愚問でございます。
私が認めなければ、例え本物であってもそれは偽物です。
大納言大伴御行にお願いしたのは「龍の首の珠」でございます。
この殿方が一番笑わせてくださいました。
そもそも、龍なんて空想上の生物なのに…。
龍が首のところに隠し持っている神秘の宝玉なんて存在するはずがありません。
聞くところによると、船が難破してさらに重病にかかられたとか。
ワタクシ、それを聞いたときは腹を抱えて笑いました。
欲望とはかくも醜いものでございます。
え? もしもそれらしい宝玉を持ってきたらどうしたのかって?
しつこいお方ですね、あなたも。
何度も言わせないでください。
私が認めなければ、例え本物であってもそれは偽物です。
最後は中納言石上麻呂にお願いした「燕の産んだ子安貝」でございます。
これも現実にはあり得ない代物です。
そもそも燕が貝などを産むわけがありません。
この殿方は転落して腰を打ち、病床にふせっておりましたが、あえなくお亡くなりになりました。
ワタクシとエッチなことをしたいがために、命まで捨ててしまわれる殿方。
ゾクゾクしますわ。
え? 口伝によるとワタクシが心を痛めたとあると?
そんな訳がないでしょう。
全ての難題は命がけのものです。
むしろ、全員命を落とすように設定したものです。
五体満足で帰って来られた殿方には心底がっかりさせられましたわ。
そんなワタクシの美しさの噂が伝わったのでしょう。
帝が一目お会いしたいと仰り、遣いの者をよこしました。
この殿方は、上の殿方たちに輪をかけて厚かましいお方でございます。
このワタクシを呼びつけるとは…。
何様のつもりでしょうか。
自分で足も運ばず、下人を遣わすとはこれ以上ない侮辱でございます。
もちろんお断りいたしました。
そうすると今度は翁経由でお願いしてきました。
あまりの厚かましさにほとほと困り果てていたところでございます。
翁も翁です。
ワタクシが嫌がっていたのはご存知のはずだったのに、官位をもらえるということで、あろうことかワタクシを差し出そうとしました。
全く持って恥知らずな行動でございます。
地位の為に、娘同然に育てた私を売るとは…。
それでも私はお会いしませんでした。
そんな二人の間に交わされた約束など、ワタクシの知ったことではありません。
それで翁が罰せられるとしたら、自業自得というものでございます。
翁には
「私を帝に差し出すのであれば、ワタクシは消え失せます」
とお伝えしたところ、真っ青な顔をして震えておりました。
地位欲しさに娘を売る人間の性根など、この程度のものです。
それからというもの、帝はワタクシの家まで来てちょろちょろとワタクシの様子を嗅ぎ回るようになりました。
今でいうストーカーのようなものでしょうか。
もうワタクシ本当に気味が悪くて…。
そこまでしてワタクシとエッチなことがしたいのかと、半ば呆れてもいました。
事ここに至ると、ワタクシはもう地球に留まるつもりはありませんでした。
帝のストーキングは気持ち悪いし、翁は信用ならないし…。
月に帰る決心をしたのです。
はい、ワタクシは月の住人でございます。
地球のものではございません。
そもそも、竹から人間が産まれるなんておかしな話でしょう。
元々地球へは観光目的で訪れたのでした。
それが、色んな殿方がアプローチしてくるのがあまりにも面白くて、からかいついでに滞在時間を延ばしていたのですが…。
もう限界を感じ、月にお迎えのお願いをしたのです。
はっきり言えば、飽きました。
そうそう、月の使者が来たときも、皆さん笑わせてくれました。
絶対に勝てないと伝えたのに、私を連れて行かせまいとして必死に抵抗する地球軍。
そのおマヌケなお姿をしっかりと心のファインダーに記憶させていただきました。
お蔭様で、月に帰った後しばらくは話のネタには尽きませんでした。
ですので、地球の皆様には本当に感謝しています。
今回、こうしたインタビューに応じたのもそういう事情からでございます。
え? 私が腹黒い?
御冗談でしょう。
ワタクシはオープンでございます。
陰険でもなんでもなく、ストレートにお伝えしております。
自分の分もわきまえない、分相応に生きることができない困ったおバカな殿方が本当に多い…それだけのお話でございます。
今回こうして久しぶりに地球を訪れましたので、また楽しませていただこうかと思っております。
どんな無理難題を出しましょうか。
今からゾクゾクしてますわ。
え? 今の地球の科学力なら精巧なものを作れるって?
そうかも知れませんね。
地球の科学の進歩の速さには本当に感嘆しております。
例えば、火鼠の裘に似せて、燃えない布くらい作ってしまわれるかもしれませんね。
そのときは、その布を太陽に向けて射出するだけでございます。
それでも燃え尽きないかどうか、見物ですわ。
それで燃え尽きなかったら?
あるいは精巧に作った燕の子安貝を持ってきたらどうするのか、ですって?
何度も言わせないでくださいな。
私が認めなければ、例え本物であってもそれは偽物です。
おほほほほ。
それでは、ごきげんよう。
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