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わらしべ長者の悔恨 本当は「怖い」日本昔話

どんもっす。

日本昔話シリーズその③

わらしべ長者がリアルにいたら多分こんな感じ👇

 

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オッス、オイラわらしべ長者

 

オイラは超有名らしいから、オイラのエピソードを知らない人はいないと思うけど、念のため。

最初に手にしたワラを物々交換していって最後は大金持ちになるっていう有名な物語だ。

最初に言っておく。

あれ完全に出来レースだから。

現実にはそんな上手い話しはないってことを今日は伝えに来たんだ。

今日のオイラの話を聞いて、誤解を解きつつ目を覚ましてくれると嬉しい。

 

大体からして、物々交換ってのは等価交換のみ成り立つんだ。

つまり、価値が同じもの同士の物のみ交換可能ってこと。

この理屈で行けば、最初に手に入れたワラ(虫のアブ付き)と最後に手に入れた屋敷が等価値ってことになる。

常識的に考えてそんな訳ないだろ?

そりゃあ貨幣というものがなかった大昔は、強引な物々交換が可能だったわけだ。

野菜とお米を交換したり、食物の代わりに大工仕事をしたり、ってね。

でも、今は21世紀。

物と物の交換ではなく、基本的には物と貨幣の交換だ。

つまり大昔のように、物の価値を基本的には誤魔化せないってこと。

片方が一方的に損をする物々交換は今の世の中ではほとんど成り立たないんだ。

これは絶対に忘れちゃいけない。

 

前置きが長くなった。

そろそろオイラのエピソードを振り返りつつ、真相を明かしたいと思う。

 

あの日、オイラは観音様に願掛けに行ったんだ。

あまりにも貧乏で、日々の食にも困る有様だったから。

今冷静に考えれば、観音様にお願いに行くなんて当時のオイラも世間知らずなもんだ。

今なら迷わずハローワークに直行だ。

もしくは市の福祉課だね。

とにかく、この時の行動は悔やんでも悔やみきれない。

 

願掛けに行ったら、「初めに触ったものを大事に持って旅に出ろ」っていう観音様のお告げがあったんだ。

うさん臭さ満載だろ?

観音様なんている訳がない。

ましてやお告げがあるわけがない。

それでも当時のオイラはその言葉を信じて、ワラを持って旅に出た。

ホント、オイラもまだまだ青いよな…。

そんな言葉を信じて旅に出るなんて。

 

なんでワラかって?

観音堂から出たときに、石につまづいてうっかり手にしたのがワラだったのさ。

これにはさすがに向こうも焦ったはず。

ちっ! っていう舌打ちが聞こえたし。

え? 舌打ちしたのは誰だって?

…あ、いやこっちの話。

 

で、歩いていると顔の周りをアブが飛んでいたから、とっ捕まえてワラの先に結んでやったんだ。

ペットみたいで少し面白かった。

その瞬間、

「よっしゃ!」

とか

「これで何とかなる!」

って声がどこからともなく聞こえてきたんだ。

え? 声の主は誰だって?

…あ、いやこっちの話。

 

ここまでは完全に偶然だ。

ここから先が完全に出来レース

要はここから先は筋書きがあったってことだ。

 

しばらく歩いていると、大泣きしている男の子がいたんだ。

オイラのアブ付きのワラを見て、面白がって、欲しいとねだってきた。

観音様のお告げを破ることになるから、できれば交換したくなかったんだけど。

どうしたものかと思案していると、母親が、持っているみかんと交換していただけないかと懇願してきた。

「どうかどうか、このみかんとそのアブ付きのワラの交換をおおおぉぉおおぉぉおおをおおぉぉぉん!!」

あまりの剣幕に思わずたじろぎ、言われるがままにアブ付きのワラとみかんを交換したんだ、いや、交換させられたといった方が正しい。

物々交換した瞬間、母親の目がギラリと光った気がした。

後から考えると、気のせいじゃなかったんだ。

どこからともなく、

「うきゃきゃきゃきゃ!」

っていう心底楽しそうな声も聞こえたし。

え? 声の主は誰だって?

…ああ、いやいやこっちの話。

 

もうこの時点で設定が破たんしてるだろ?

だって、最初に手に入れたものを大事に持って旅に出ろ、って言われて1時間もしないうちに手にしたワラを手放してるんだもの。

こんなんで幸せになれる訳がない。

でも、オイラは良いことしたから清々しい気持ちになってたんだ。

人を疑うってことを、当時のオイラはまだ知らなかったから…。

今にして思えば、あの子供も無理やり母親に泣かされていたんじゃなかろうか。

体のどこかをつねられたりして…。

そう言えば、妙に赤くなったほっぺたを押さえていたな…。

はは、まさかね…。

オイラの考え過ぎであることを祈ろう。

 

観音様のお告げは守れなかったなぁと思いながら、みかんをお手玉しながら歩いていると、今度は喉の渇きを訴える商人に出会ったんだ。

あまりにも喉が渇いていたらしく、商人の持っていた上等な反物とオイラの持っていたみかんとの交換をお願いしてきた。

いよいよ怪しいだろ?

当時の反物は相当な高級品だ。

現代で言えば、ちょっとしたバイクくらいの価値がある。

それとみかんの交換だ。

どう考えてもおかしい。

大体からして、商人が旅をするのに川の位置を知らないはずがない。

生き死にに直結するから、水や食料の調達場所は調べてあるはずなんだ。

初めて訪れる場所でもないだろうし。

山賊にあったならまだしも、普通に計画不足で行き倒れている商人なんて見たことも聞いたこともない。

しかもしかも、その時は雨が降っていたんだ。

そのことを突っ込もうとすると、大声でかき消された。

「え? でも今雨降ってるから、それで潤せば…」

「喉が渇いて渇いて仕方ないんですよぉおぉおぉぉお!! そのみかんをくださいいぃぃぃいぃいいいぃいーっひっひっひっひっひひひのひ!!」

あまりの剣幕に思わずたじろぎ、言われるがままにみかんと反物を交換したんだ、いや、交換させられたといった方が正しい。

物々交換した瞬間、その商人はニヤリと笑ったんだ。

確かに笑った!

ってか、そんなに喉がカラカラならみかん一つでは足りないだろうに。

薄気味悪かったからその場から離れようとすると、商人は水を得た魚のように走り去っていった。

超元気じゃん。

どこからともなく、

「ぷひひひひ!」

っていう心底嬉しそうな声も聞こえたし。

え? 声の主は誰だって?

…ああ、いやいやこっちの話。

 

なんか変だなぁと思いながら歩いていると、今度は侍に出会ったんだ。

その侍は愛馬が急病で倒れてしまったんだけど、急いでいるために馬を見捨てなければならない、と言ってきた。

そして案の定、反物と馬との交換を申し出てきた。

病気にかかった馬と上等な反物とを交換するのは非常に心苦しいが…って言ってたけど、病気さえ治れば馬は超高級品だ。

現代で言えば、ちょっとした高級車くらいの価値がある。

病気にかかったとはいえ、元気になれば物凄い価値になる。

願ってもない話だ。

…というか、当の馬は元気に走り回っている。

どう見ても病気には見えない。

「え? でも、元気に走り回っている気が…」

とオイラが言い終わる前に、

「ああいう病気なんだ。走り回ってないと死ぬ。そういう病気なんだよ、あれは。な? そうだろ?」

と言うが早いか、オイラの喉元に刀を突きつけてきた!

ヤバい、目がマジだ!

若干ヨダレも垂らしている!

すげえ、くせえ!

なすすべもなく、言われるがままに反物と馬を交換したんだ、いや、交換させられたといった方が正しい。

交換した馬に水を飲ませたら大人しくなった。

喉が渇いていただけか。

馬なんていう高級品を手に入れたにもかかわらず、オイラの心はもやもやしていた。

今後何が出てくるんだろう?

どこからともなく、

「@:#$%¥*+;&?!」

っていう文字では到底表せない、わめき声のようなのも聞こえたし。

え? 声の主は誰だって?

…いや、ほんとにこっちの話。

 

んで、仕方ないから馬に乗ってパカランパカランしてたら、屋敷にぶち当たった。

ちょうど?旅に出ようとした主人が、屋敷の留守を頼んできて、代わりに馬を借りたいとか言ってきた。

「え? これから旅に出ようというのに、馬も用意してなかったんですか…?」

とツッコんだら、

「…………………………………………………………………………………」

と無言で詰め寄られた。

期せずして見ず知らずのおっさんと見つめ合うこと5分、ついにオイラが折れてしまった。

そう、屋敷と馬を交換させられた。

主人は、旅から帰ってこなかったら屋敷をオイラに譲ると言い出した。

…これ絶対帰ってこないパターンだよ。

案の定、主人は帰ってこなかった。

永遠に。

 

どこからともなく、

「作戦完了」

っていう声が聞こえた。

え? 声の主は誰だって?

…そうだね、ここまで言ったら正体を明かさないといけないね。

 

声の主は、オイラが最初に訪れた観音堂の住職だ。

生臭坊主だ。

全てはこいつが仕組んだことだったんだ。

 

どういうことかって?

説明しよう。

あれから、オイラが住みはじめた屋敷にはひっきりなしに人が訪れた。

皆同じことを聞いてきたんだ。

「観音堂でお祈りしたら、屋敷が手に入ったって?」

 「え、ええ。そうですけど…」

 決してオイラは嘘は言ってない。

だって本当のことだもの。

 

それからというもの、あの観音堂には日本各地から人が訪れた。

当時は、ネットも電話もない時代だ。

人々の信仰心というものは今とは比較にならない。

噂を聞いた人々が、自分もあやかろうとして願掛けにやってきたのだ。

そしてその人々が収めるお賽銭の額がまた尋常じゃなかった。

現代の価値で言えば、軽く兆は超えていた。

 

これでわかったろ?

全ては、自分のお堂の評判を広めるために、お堂の生臭坊主が仕組んだことだったんだ。

オイラが途中出会った人々は、賽銭を握らされていたんだ。

だから皆あんなに必死になって、物々交換を申し出たんだ。

全ては生臭坊主のシナリオどおりだった。

一つだけ誤算があったとすれば、オイラが最初に掴んだものがワラだったこと。

いくら何でも、ワラとの物々交換は不可能だ。

だってそこら中にあるもの。

…まあそれでも彼らなら強引に交換をせまってきそうだけど。

だから、オイラがアブをワラの先につけなかったら、こうはなってなかったかも知れない。

 

え? 屋敷も手に入ったのに、なんで後悔しているのかって?

一人だけ消息不明な人がいるだろ?

そう、屋敷の主人だ。

彼が帰ってきてしまったら、オイラは屋敷から出ないといけない。

そうすると元の通り、無一文だ。

となると、観音堂のご利益は嘘っぱちってことになる。

屋敷の主人に幾ら握らせたのかは知らないけど…でも、人の心なんていつ変わるかわからないだろ?

 

屋敷の主人が永遠に帰ってこないようにするには?

そういうことだ。

但し、これはあくまでオイラの推測だ。

オイラのこの推測が間違っていることを夙に願ってやまない。

 

とにもかくにも、上手い話はその辺に転がってないってことだ。

人間、真面目に働くのが一番だ。

皆、肝に銘じておいてほしい。

 

さ、そろそろハローワークに行かなくちゃ。