鬼の独白 本当は「優しい」日本昔話
どんもっす。
日本昔話シリーズその⑤
鬼がリアルにいたら、多分こんな感じ👇
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あ、どうも。
鬼っす。
見たまんま鬼っす。
日本昔話に限らず、色んな話に昔から出てくるから、日本で一番有名な敵キャラじゃないかと思ってるっす。
まあ、一口に鬼と言っても色々いるっす。
赤鬼、青鬼、一鬼…
基本皆良い奴っす。
でも、大きな体と怖い風貌の為か、世間では俺たち鬼はいつも悪者っす。
何も悪いことしてないのに親の仇みたいに追い回されるっす。
世間一般のイメージはとんでもない誤解っす。
今日はその誤解を解きに来たっす。
例えば、日本昔話ではちょいちょい村の娘をさらいに鬼がやってくるっす。
大体物語の主人公が、とある村に到着した直後位に鬼がやって来るっすが、タイミング良すぎと思わないっすか?
あれ、演出の為にわざわざタイミング合わせて出向いてるっす。
非日常的な事案を通じて知り合った男女は結ばれやすいっす。
統計データでも出てるっす。
つまり、主人公と村娘をくっつけるためにわざわざやってることっす。
大きな声では言えねっすが、お世辞にもカッコいいとは思えない主人公もいるっす。
そういう主人公の為に、俺たち鬼が一肌脱いでる訳っす。
その証拠に、鬼側はあっさりやられるっす。
人間の通常攻撃なんか、痛くも痒くもないっす。
でも、皆痛がったふりをして、負けたふりをしてるっす。
そのおかげで、今まで何組ものカップルが生まれたっす。
俺たちは恋のキューピッドって奴っす。
物語はハッピーエンドと相場が決まってるっす。
え? そうは言っても、娘を何度もさらっている鬼もいるって?
それも誤解っす。
確かにさらうかも知れねっすが、ちゃんと村に帰してるはずっす。
多分、一緒に酒盛りとかしているはずっす。
最大の勘違いとして、鬼が人間を食べるという先入観があるっす。
人間なんか食べねっす。
食べたことないっすが、絶対にマズいっす。
鬼も普通に野菜とか牛とか豚とか魚を食べるっす。
普通に美味しい食材がその辺にあるのに、わざわざ人間食べる鬼いねぇっす。
人間に欲情することもないっす。
よくよく見てほしいっす。
人間と鬼、全然見た目が違うっす。
人間の村娘に恋をするのは、人間が他の生物に恋するのと同じくらいあり得ないことっす。
なので、さらって変なことをしているというのも全くの誤解っす。
え?
ああ、賽の河原…。
あそこはブラックっす。
人間の子どもが必死こいて積み上げた石を叩き壊す…。
人間の、いや鬼の所業じゃないっす。
俺たち鬼も嫌々やってるっす。
楽しんでなんかないっす。
大体からして、生物の子供は万物共通して可愛いっす。
犬や猫、象やゴリラやライオン…
皆可愛いっしょ?
子供は種族を越えて、可愛いもんっす。
鬼から見た人間の子供も例外ではねぇっす。
そんな子供たちが一生懸命積み上げた石を崩すのに、心が痛まねぇわけねぇっす。
しかも、賽の河原に来る子供たちは、現世で親よりも早く死んだからその親不孝の報いを受けるために連れてこられるっす。
この設定考えた奴、頭おかしいっす。
親より早く死にたい子供なんているわけねぇっす。
親より早く死んでしまう子供たちの大半が、病気や不慮の事故、虐待によるものっす。
現世で散々な目にあって、あの世でも苦行を受けるんす。
正気の沙汰じゃないっす。
え? じゃあなんであんなことしてるのかって?
ノルマっす。
俺たち鬼も雇われている以上、嫌なことでもやらないといけないっす。
あんたら人間のサラリーマンと同じっす。
閻魔大王の命令っす。
あ、ここだけの話でお願いするっす。
なので、年度始めの鬼事異動では、皆戦々恐々っす。
賽の河原勤務になったら、完全に外れっす。
鬱になって、仕事辞める奴も出てくるっす。
そもそも論として、積んだ石を崩さないといけない理由については、古いしきたりとかこの世の決まりとかそういうことっす。
太陽が東から昇るのと同じで、はるか昔から決まっていることっす。
俺たちに文句言われてもどうしようもないっす。
最終的に石を積み上げることに成功したら地蔵菩薩が救済してくれるらしいっすが、この地蔵菩薩が作った設定じゃないかと睨んでるっす。
自分の株を上げるために…。
あくまで推測っす。
よもやま話として聞いといて欲しいっす。
とにかく賽の河原で、喜々として仕事している鬼は一人もいないっす。
信じてほしいっす。
え? 酒呑童子先輩?
もちろん知ってるっす。
鬼界では、カリスマっす。
レジェンドっす。
マジ、パネェ存在っす。
ちなみに、高校の先輩っす。
当時は滅茶苦茶モテたっす。
いや、酒呑童子先輩が、っす。
子分も滅茶苦茶いたっす。
別の高校に行ってしまった茨木童子先輩とは子供の頃から仲が良かったっす。
いや、酒呑童子先輩が、っす。
大人になってからは良く俺も一緒に飲みに連れて行ってもらったっす。
別々の高校に行ってしまった酒呑童子先輩と茨木童子先輩が、一度だけ些細なことがきっかけで対立してしまう事件があったっす。
これは事件も事件、大事件だったっす。
お二人とも高校の後輩や子分を引き連れて、3丁目の工場跡地でぶつかったっす。
お互い300鬼くらい引き連れての大戦争!っていうマンガみたいな展開だったっす。
鬼同士の喧嘩はやばいっす。
人間同士の喧嘩だったら、せいぜい釘バットっす。
鬼はリアルにこん棒持ってくるっす。
あのトゲトゲのついた奴っす。
最終的には警察も出動したくらいっす。
あ、俺は家で風邪ひいて寝てたっす。
今のも他鬼から聞いた話っす。
お二人とも最初は人間だったけど、なんやかんやで鬼になったと言われてるっすが、大きな誤解っす。
お二人とも元から鬼っす。
子どもの頃近所に住んでたから知ってるっす。
ってか、人間は鬼にはなれねっす。
このお二人のお蔭で、様々な伝説が生まれてしまったっす。
「鬼」という形容詞が色んな意味で使われるようになったのもこのお二人のせいっす。
「強い」「悪い」「怖い」「ものすごい」「粗い」「大きな」「固い」…。
良く、「鬼のように強い」とか、「お前は鬼か!」といった言葉を聞くっすが、あのお二人見てると納得っす。
ちなみに、「鬼」には「ものすごい」という意味も含んでいるので、「鬼のように弱い」という使い方もあながち間違ってはないっす。
そんなこんなで、鬼も基本的には人間と同じっす。
もちろん、中には酷いことする鬼もいるっす。
でもそれは、人間も同じことっす。
これで誤解を解いて、今後は普通に接してくださると今回出てきた意味があるというものっす。
それでは、この辺で。
今から?
今からは外回りっす。
今月のノルマまだこなせてないっす…。
とほほっす。