ヘラクレスの栄光Ⅲ シナリオは神だがそれ以外が…
どんもっす。
過去の名作(迷作?)レビュー、第三回目は
最近ようやくクリアしましたよ…。
シナリオが秀逸とのことでクリアしたかったゲームの一つなのですが、如何せん操作性、インターフェース、エンカウント率、ゲームバランス等々、諸々の設定が本当にひどい。
あまりのひどさに、毎回中盤くらいまでやって放置、中盤くらいまでやって放置を繰り返していましたが、今回気合を入れて本腰入れてプレイ!
見事にクリアできました(攻略サイトに大分お世話になりましたが)。
中盤まではシナリオが普通な上に、戦闘があまりにもかったるすぎて放置したくなるんですよ…。
で、確かに思った。
シナリオは秀逸。
というよりも神。
私なりにS、A、B、C、D、Eの6段階で評価すると、
・シナリオ…S というか神の領域
・ゲームバランス…D
・音楽…C
・グラフィック…C
・エンカウント率…E
・謎解き…D
・総合評価…B
こんな感じです。
シナリオが神!その一点だけで名作と語られているようなこのゲーム。
それ以外はうーんって感じ。
シナリオが秀逸でなければ、確実にクソゲーもしくは何も語られないゲームだったことでしょう。
ということで、ゲーム性について言及したいと思います。
※ネタバレ注意
自分でプレイして結末を知りたい人は読まない方が良いです。
音楽とグラフィックがなんか暗い
1992年当時にSFCとして発売されたということを考えれば、決して悪くはないんですよ。
音楽もグラフィックも。
これ以降に発売されたソフトで、もっとひどいグラフィックなんかいっぱいあったし。
世界観を壊さないような音楽やグラフィックであることは重々承知しています。
が、それでもやっぱり暗い…。
特に戦闘。
まず、ボスがやる気の欠片もないグラフィックの奴らが多数。
アーグリオとかナーガとか…
凄い粗が目立つグラフィックです。
ボス戦の音楽は結構いいんですけどね。
で、雑魚戦は音楽も微妙だし、グラフィックも微妙だし。
母なるガイアが時折カットインでゲーム中に出てくるんですが、こちらは異常なまでに気合が入っているグラフィックです。
まあ、超重要イベントなので、当然っちゃ当然ですが。
このグラフィックを、せめてボスだけでもいいから分けてあげて欲しかった。
ゲームバランスとエンカウント率が悪すぎる
当時のゲームには、なぜかやたらとエンカウント率が高いゲームが存在します。
このゲームも御多分にもれず、エンカウント率がやたらと高い。
しかも、最後の方は敵が画面狭しとワラワラ出てきます。
私が確認できたのは、最大8匹。
この雑魚敵が、HP回復したり、死んだ奴を復活させたり、仲間を呼んだり…。
戦闘スピードが遅いこともあって、一回の戦闘が果てしなくなげぇ。
こちらの与えるダメージに対して、死ぬよりも早く仲間を呼ぶ敵(ドラクエで言うところのマドハンド)にハマったときは、さすがにリセットしました。
戦闘が終わらねぇ…。
さらにこのゲーム、こちらのレベルが上がったら雑魚敵も強くなる、という厄介なゲームシステムを取り入れています。
こちらの強くなるスピードの方が早いので、相対的な強さが永久に変わらない、ということはないのですが、こちら側が圧倒的に強くなることもないため、雑魚戦のスピードが全然変わりません。
世界崩壊後、シナリオは畳みかけるように一気に進んでいくんですが、戦闘はそれまでに増してのらりくらりとし始めます。
遅い…。
早くシナリオの続きが見たいのに、それを嘲笑うかのように道を塞ぐ雑魚敵ども…。
10Lvくらい前に初めてエンカウントしたような奴らが、ニヤニヤにやけながら立ちふさがっているかと考えると、コントローラーを壊したくなる衝動に駆られます。
ゲームバランスも決して良いとは言えません。
雑魚敵はこちらに合わせて強くなるのに、ボスはずっとそのまま。
従って、雑魚戦よりもボス戦の方がはるかに楽ちん!という逆転現象が起きてしまいます。
補助魔法をかけまくって、余裕で殴り殺せるボスに対して、補助魔法をかける暇もなく総力戦になりがちな雑魚戦…。
何かが間違ってます。
ただし、終盤に手に入る装備やアイテムが非常に便利なので、これらを上手く使えば雑魚戦もそこそこ楽になります。
各種最強魔法や補助魔法の効果がある装備やアイテムが多数手に入り、しかも無制限に使えるものも多く存在するのでその点は楽っちゃ楽。
各キャラクターが覚える魔法が使われなくなる、という欠点はありますが。
この辺のゲームバランスは本当に難しいところではあります。
埋める、飛び降りるという謎のコマンド
他のゲームとの差別化を図ろうとしたのか、このゲームには謎のコマンドが二つほどあります。
それが、埋めると飛び降りる。
まずは埋めるから。
このゲームはアイテムを最大48個しか持ち歩けません。
あまりにも多くのアイテムを持ち歩けてしまうと、ゲームの世界観を崩したり、難易度が激減したりと良くないこともあるので、これ自体には問題ありません。
問題は、過剰なアイテムの保管方法。
その方法が、地面に埋める。
??
と思ったでしょ?
そのまんまです。
町とかの地面に埋める。
モグラか!
っつーくらい地面に埋めます。
地面に埋めて保管。
これだけ。
なお、地面に埋めても地面の色などには特に変化がないため、どこに埋めたのかは覚えてないといけません。
できるか!
一応、救済措置としてどこに埋めたのかを教えてくれるキャラがいるのですが、めんどくさすぎる…。
そもそも、そのキャラ自体がどこにいるのか忘れるし…。
とはいえ、アイテムは48個しか持てないので、過剰になってきたら埋めるしかありません。
埋める町と場所を決めて、せっせとアイテムを埋めていたある日、預かり屋なるものに遭遇。
アイテム預かってくれました。
は?
舐めてんの?
さすがにコントローラーを破壊しそうになりました。
埋めたアイテムを全部掘り起こして、預かり屋に預けに行きました。
すげぇ無駄な行動。
一体全体開発スタッフは何を考えて、埋めるなんてコマンドを考えたんだろうか…。
最初から預かり屋を出しとけや。
で、もう一つの謎コマンドが飛び降りる。
正確にはコマンドではなくて、崖や穴に向かって、十字キーをダブルタップ。
このゲームでは主人公たちが不死身という設定です。
不死身ということを証明あるいは活かすために、ありとあらゆる場所から飛び降りることになるんですが、その回数が多いこと多いこと。
開発スタッフに飛び降り自殺願望がある方でもいたのではなかろーか、というくらいに飛び降ります。
この飛び降りるという行為が攻略上非常に重要な意味を持っていて、とにかく主人公たちは色んな所から飛び降りる羽目になります。
で、大体着地が上手くいってない様子。
何なんだ。
この埋めると飛び降りるというコマンド、もっと何とかならなかったんですかね?
シナリオは神もしくは神々
上記色々とクソゲー要素を多分に含みながらも、それら全てをひっくり返してお釣りがくるくらい、シナリオが秀逸です。
言い換えれば、シナリオの秀逸さをゲームバランスやシステムが全て台無しにしているとも言えますが…。
当時リアルタイムでクリアできた小中学生は少なかったでしょうし。
※ここからは本当にネタバレです。
注意して読んでください。
主要キャラは最後の最後で5人になります。
主人公、レイオン、ステイア、謎の男、ヘラクレス。
このうち、主人公と謎の男の名前は自分で決めることができます。
それだけ、この二人が物語上重要な役割を担っているのですが、その説明は後程。
最初に動かすことができるのは、当然主人公。
主人公チームはヘラクレス以外は全員記憶を失っています。
ゲーム当初は、ゲームの目的が明確ではありません。
なぜ旅をするのかもわかっていません。
とりあえず記憶喪失の主人公を動かせるので、記憶を取り戻す旅にでてみっかぁ?くらいのノリ。
物語を進めていくと、どうやらバオールという名の男が神々の逆鱗に触れる行為をしたらしいことが明らかになります。
このバオールという男のせいで、母なる大地ガイアがかつてないほど傷ついてしまいました。
神々は様々なアプローチから、母なる大地ガイアを救おうとします。
全知全能の神・ゼウスは大洪水を起こして、地上を洗い流すことによって
冥界の王・ハデスは魔物を送り、人間を滅ぼすことによって
プロメテウスは三人の人間の記憶を奪い、不死の肉体を与えて、その行為(自分たちの過ちを自分達の手でやり直せるかどうか)を見守ることによって
ウラノスは自分自身の封印を人間に解かして、自ら人間界に介入しようとすることによって
それぞれが神であり、お互いがお互いを良く思っておらず、次回の神の王を決めるための要素も相まって、神の間では色んな駆け引きが行われます。
ここで重要なのが、彼ら神の世界を救う行為=人間を救う行為ではないということです。
ゼウスやハデスは問答無用で人類を抹殺しに来ています。
母なる大地であるガイアを傷つけているのは他ならない人間だからです。
これは、世界そのものを作った神視点でしかありえない、非常に新鮮な考え方だと思いました。
プロメテウスから不死の力を得た人間は3人のはずが、なぜか四人集まります(ヘラクレス以外の四人。ヘラクレスは半神半人であり、元々不死身)。
プロメテウスは、かつて人間が犯した過ち(というかバオール個人が犯した罪)を人間が清算できるかどうか、不死の力を与える代わりに記憶を奪って、その行動を見極めようとします。
このプロメテウスが結構抜けているというか、説明してくれないというか…。
シナリオ上仕方ないにしても、神様にしてはいくら何でも説明不足じゃない?ってくらい説明してくれません。
「お主らが正しい道を選べるかどうか見ておったが、間違えおって!」
みたいなこと言ってくるんですが、記憶を奪っておきながらこの言いぐさはちょっとひどくないですかね?
いや、知らんがな!
って感じ。
※ここからは本当にネタバレ
バオールという人間が犯した罪は、オケアノスという神の使いを石化して陸地に変えて、人間の生活向上を図るというもの。
オケアノスとは滅茶苦茶デカいクジラみたいな化け物。
こいつを石化させることによって、要は橋を作ったわけですね。
石化させた方法は、見る者全てを石に変えてしまうメデューサの首を使って。
オケアノスの石化を解くには、メデューサ三姉妹の血を使えばいいのですが、プロメテウスが選んだ人間3人はオケアノスではなく、天上界を支えるアトラスの石化を解こうとします。
で、プロメテウスに怒られて、ゼウスにも怒られて地上は津波で流されてしまいます。
…だって、オケアノスなんて知らないんだもの。
ちょっとは多めにみてくれよ。
この天上界を支えるアトラスの石化を解こうとしたのは、ウラノスを地上に下ろすため。
ウラノスの力を借りて、地上の危機を救おうとしたからです。
ウラノスも中々の策士で、自分を信じている国の王様を懐柔して、自分を地上に下ろそうとします(ゼウスの力で天上に封印されており、地上に力が及ばない)。
アトラスの石化を解くタイミングで、バオールという名の醜い巨人と戦闘になります。
そう、神々の怒りをかったバオール本人は、物言えない巨人に姿を変えられてしまい、悠久の時を流されていたのでした。
ここからが衝撃の事実。
このバオールという人物、実は主人公そのものだったのです。
アトラスの石化解除の直前(アトラス石化解除には失敗する)に、プロメテウスとゼウスの怒りを買い、ゼウスの起こした大洪水によって、地上は崩壊します。
一行はハデスにより、冥界へと呼び出され、そこで真実を知らされます。
実は主人公は、ハデスにより不死の力を得ており、魔物を率いて地上を滅ぼす命を受けていたのでした。
つまり、
主人公⇒ハデスにより不死の力を得る
他の3人(レイオン、ステイア、謎の男)⇒プロメテウスにより不死の力を得る
となっており、地上に4人の不死の人間がいるのは、辻褄があっているのです。
とはいえ、プロメテウスに初めて会ったとき、
「お主ら人間3人に不死の力を与えて~」
云々の説明を受けているとき、こっちのパーティは主人公、レイオン、ステイアの3人。
謎の男はまだ仲間になっておらず、どう考えてもミスリードを狙っているとしか思えないプロメテウスの発言。
神様なんだから、もう少し考えてくれよ。
巨人化したバオール(主人公)が現・主人公たちの前に姿を現すのは時系列的におかしい(主人公が二人いる)のですが、これは冥界に行った主人公を時の神クロノスが永遠の時間をさまようように、主人公に無間地獄を与えたため。
流れを時系列にすると
・バオールがオケアノスを石化させ、橋作る
↓
・神々激怒 人間を滅ぼそうとする
↓
・人間は慌てて、オケアノスを元に戻そうとする
↓
・オケアノスを元に戻そうとした人間達を問答無用でバオールが石化させていく
↓
・バオールはゼウスにより殺され、冥界のハデスの下に行く
↓
・バオールはハデスに不死の体と若い肉体をもらい、魔物を引き連れて地上の人間を滅ぼしに行く
↓
・再度バオールはゼウスの怒りを買って、記憶を失う
↓
・記憶のないバオール(主人公)の旅の始まり(ここからゲームスタート)
↓
・主人公たちはオケアノスではなく、アトラスの封印を解こうとして、神々に失望され、ゼウスのおこした大洪水によって、地上は流される
↓
・地上破滅後、主人公たちはハデスのいる冥界へと引きずり込まれる
↓
・ハデスとの約束を守れなかった主人公(バオール)は、醜い巨人に姿を変えられ、無間地獄のタルタロスへ落とされる
↓
・タルタロスを脱出した主人公は時の神クロノスによって、過去(地上破滅前)に飛ばされる
↓
・過去の自分達によって、醜い巨人になった主人公(バオール)はボコボコにされる。そのとき主人公(バオール)がとった選択は…?
最後の主人公の取った選択により、その後の未来が変わります。
過去に行く系の話はよくよく考えると矛盾が生じるんですよね。
ターミネーターの話もそうですが、過去を変えると、結局事件そのものが起きなかったもしくは起きたけど未然に防げたことになってしまい、じゃあそもそもターミネーターが作られないから、どうやって過去に現れるの…?というパラドックスが生じますが、まあSFの世界なので。
それよりも私が気になるのは、ハデスの命令を受けてバオールが地上を滅ぼそうとしたこと。
このあたりが納得いきません。
別にバオール(主人公)は人間を恨んでなかったし、むしろ偉業を成し遂げて名声を得ようとしていたんです。
別に人間を滅ぼそうとはしてませんでした。
自分の邪魔をする人間は容赦しないって感じでしたが。
ハデスの命令を受けた時も、半分死者のような感じだったのですが、この時点ではまだ記憶を失っていません。
なので、ハデスの命令に従うこと自体が若干おかしい。
少なくとも、人間を滅ぼすことに加担するような人間ではなかったのに。
この辺のストーリーはちょっと脇が甘いかな、と感じました。
ラスボスが最後の最後まで誰かわからない
シナリオ上、勧善懲悪ではありません。
まあ、バオールという主人公は自分のことしか考えてない、クソみたいな奴ですが。
つまり、ものすごい悪い奴、は味方側なわけです。
ってか主人公。
で、旅をつづけても、こいつがラスボスか?ってな奴に全く出くわしません。
神々か? はたまた旅先で出会った魔物か? それとも?
私は最後の最後までわかりませんでした。
というか、倒して え? こいつがラスボスだったの?
って感じでした。
このあたりの伏線の張り方は非常に上手いと感じました。
ラスボスは自分の目で確かめてください。
というわけで、ヘラクレスの栄光Ⅲ お勧めです。
ゲーム的にはあれですが、シナリオは本当に秀逸。
質問があればお答えします。