「学力の経済学」 子供の教育に携わる全ての人に読んでほしい一冊
どんもっす。
教育経済学者の中室牧子さん著の「学力の経済学」という書籍を読み終わりました👇
著者である中室さんは慶應義塾大学を卒業後、アメリカのコロンビア大学で博士号を取得されており、教育を経済学的な手法で分析する教育経済学を専門とされております。
教育の統計データを事細かく分析して、エビデンス(科学的根拠)を示すことにより、今後の教育がどういう道を進むべきかについて考察されています。
私自身理系人間であり、開示されているデータは最大限活用します。
データは嘘をつきません。
誤ったデータなどが問題になるのは、データそのものではなくそれを利用する人間側の問題です。
教育分野はまだまだ研究過程であり、日本の教育会自体が統計データを開示しない、などと言った問題点から結論などがはっきりしない点もいくつかありますが、それでも米国などで開示されているデータから考察している部分もあり、非常に参考になります。
子どもの教育に悩むご家庭向けの内容の章と、文科省や教師といった教育に携わる方向けの章と分かれているので、教育に携わる全ての人が読んで損はしないと思います。
簡単ではありますが、本の紹介を少々。
全部で5つの章と補足から成り立っています。
第1章 他人の成功体験はわが子にも活かせるのか?
・データは個人の経験に勝る
⇒導入部分
第2章 子供をご褒美で釣ってはいけないのか?
・科学的根拠に基づく子育て
⇒子供を持つ夫婦向け
第3章 勉強は本当にそんなに大切なのか?
・人生の成功に重要な非認知能力
⇒子供を持つ夫婦向け
第4章 少人数学級には効果があるのか?
・科学的根拠なき日本の教育政策
⇒文科省、教員など、教える側向け
第5章 いい先生とはどんな先生なのか?
・日本の教育に欠けている教員の「質」という概念
⇒文科省、教員など、教える側向け
以下ちょっとだけ内容説明。
「目の前ににんじん」作戦の効果や如何に?
要は、ご褒美で釣って子供に勉強をさせるのはOKなのか?、ということ。
大昔から議論されてきた内容ですが、統計データ上では問題ないみたいですね。
但し、アウトプット(テストで良い点を取る)のに対してご褒美をあげるのではなく、インプット(読書をする、など)に対してご褒美をあげなければ効果は薄いと記載されています。
理由は本書にも記載されているのですが、アウトプット(テストで良い点を取る)に対してあげる場合は、そもそもテストで良い点を取るための勉強の仕方を子供が知っている必要があるとのこと。
考えてみれば、当然ですね。
テストで良い点取れば~という謳い文句がありますが、そもそもテストで悪い点を取りたい子なんかいるはずがありません。
一生懸命勉強しても、成績に結びつかない子って必ず一定数存在します。
特にそういう子たちには、勉強する方法や基礎的な知識、つまりインプットに目を向けさせる必要があるんです。
この辺は、家庭教育が結構重要なポイントだと私は思います。
ゲームは1日1時間!という謎ルールは正しかった!!
私たちが子供の時代は、ファミコンやゲームボーイが発売され始めた時代で、まだ一般家庭にゲームというものは存在していませんでした。
なので、どこの家庭でも大体ゲームのやりすぎを止めるために、1日1時間という謎のルールが敷かれていました。
当時は、このルール意味あるのかな、と思っていましたが、統計データでは意味があるとのことです。
1日1時間程度のゲームやテレビ視聴は子供の発達や学習能力にほとんど影響がないにも関わらず、1日2時間を超えると飛躍的に負の相関がみられるようです。
なので、1日1時間ルールはあながち間違いではないとのこと。
当時のお母さん方がこれを体感で知っていたとしたら、主婦恐るべし!ですね。
但し、ゲームをやったら子供が暴力的になるなどと言ったことはほとんどないようなので、その点は心配ご無用です。
要は、ゲームするにもほどほどに、ってことですね。
教育費で最も収益率が高いのは、小学校に入学する前の段階
要はどの段階で教育にお金をかけるのが良いのかということ。
統計データでは、0~6歳児の段階らしいです。
私が今住んでいる鳥取では、「森のようちえん」という素晴らしい幼稚園があります。
「森のようちえん」では子供たちの自主性を何より尊重しており、この書籍の第3章でも触れられている非認知能力(自制心、やり抜く力など)を幼児期に伸ばすことができることで有名です。
この幼稚園の噂を聞きつけて、仕事を捨てて東京などから移住してくる夫婦もいらっしゃるくらいです。
その話を聞いたときは、いくら何でもやりすぎでは?と思ったりもしましたけど、この書籍通りであれば、むしろ幼稚園の時にこういう教育を受けさせることは人生において非常に重要なファクターを占めるということです。
「孟母三遷の教え」のエピソードにもありますが、孟子の母は子供の教育の為に、環境が良い場所を求めて三回引っ越したとか。
逆に言えば、子どもの教育って幼いうちからこのくらい手をかけないと駄目ってことですね。
※私立の幼稚園にいれて、エスカレーターで大学まで行かせるのは全然違います。あしからず。
この本を読んで思ったのは、教育ということに関して言えば、子どもを取り巻く全ての環境が重要なのだということ。
学校だけに頼っても駄目だし、家庭教育ももちろん重要だし…その他の環境的な要因全てが重要になってきます。
私の少年時代、小学校のころから塾に行ってる子供たちがいました。
大半が中学や高校に入っても、部活動や生徒会活動といったようなことをしないで、常に塾通い。
それでも、その後良い大学に入った子は多くはありませんでした。
そういった家庭の子たちは、当時から両親が共働きで子供にあまり目をかけてあげられなく、塾に行かせて満足している家庭も多くありました。
それよりも、子供時代に一杯遊んで、クラブや部活動に精を出していた子のほうが、良い大学に進んでいます。
こういう家庭の子たちは、家族仲が良く、休日などはこぞって出かけるような家庭ばかりでした。
別に良い大学に入ることが正解というわけではないのですが、子供のころから塾に行かせる目的が良い大学に行かせること、だとしたら非常に皮肉な結末だと思いませんか?
教育とは、答えがないような側面もありますが、だからこそ皆が真剣に考えるべき分野であると私は思います。
興味のある方はぜひとも読んでみてください。