山岳救助に過失!? 最高裁の判決は正しかったのか?
どんもっす。
雪山で遭難した男性を助けに行った救助隊の過失が認められました👇
「山岳救助に過失」賠償確定=死亡男性遺族、北海道警訴え-最高裁:時事ドットコム
記事の一部を引用します。
北海道積丹町の積丹岳(1255メートル)で2009年、道警による救助活動中に遭難者の男性=当時(38)=が滑落し死亡した事故をめぐり、男性の両親が道に約8600万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)は道側の上告を退ける決定をした。決定は11月29日付。計約1800万円の賠償を命じた二審判決が確定した。
男性は09年1月、スノーボードをするため入山して遭難。道警の救助隊が発見して下山する途中、男性を乗せたストレッチャーがくくり付けた木から離れ、滑落した。男性は発見されたが、凍死が確認された。
要は、
①スノボーやってた男性が遭難した
②救助隊が助けにいったけど、ストレッチャーが木から離れて男性滑落&死亡
③遺族が道警を訴えたら、遺族側が勝ち、賠償金1800万円獲得
ってことなんですけど、皆さんこの判決どう思います?
この件、誰が悪いと思いますか?
①スノーボードやってて遭難した男性?
②救助に行っておきながら、失敗した道警?
①の男性が悪いとする意見は、自己責任タイプの方ですね。
雪山に勝手に行って勝手にスノーボード滑ってたんだから、当然自分が悪い。
被害者遺族は感謝こそすれ、賠償金を請求するなんてもっての外!っていうタイプの方々でしょう。
②の、救助に行っておきながら失敗して、男性を死なせた道警は言語道断!という意見は、なんらか仕事をする方々は、例え己の命を危険に晒してでも職務を全うすべきであり、失敗するなんてありえない、と考えているタイプ。
特に命を預かる職に就いている人々は失敗なんかするはずがなく、当然その失敗は許されるべきではなく、今回の賠償責任は当たり前だ!と思っている方々ですね。
あなたはどっちのタイプですか?
私は当然①の、自業自得、自己責任なんだから道警が賠償金を払う必要はなく、遺族はむしろ感謝すべきだと思っているタイプです。
訴えるなんて言語道断です。
確かに、道警がミスをしたことは否めないでしょう。
しかし、ミスなんて人間である以上絶対にあります。
しかも雪山での救助活動。
一体、日本在住のどれだけの人が、正確に確実に雪山での救助活動を遂行できるのか。
答えは0人です。
はっきり言えば、雪山なんて何が起こっても不思議ではありません。
救助隊も己の命を危険に晒して、要救助者を助けに行かないといけないんです。
100%救助可能な案件なんてあるわけがないんです。
これは、私自身ガイド業をやっているので断言できます。
ガイド業は救急法や救助法を学びます。
何度も何度も何度も…。
でも、所詮そんなものは街中での講習であったり、想定内の範囲でしかできない訓練です。
実際にそういう場面に出くわしたら、訓練通りなんて絶対にできません。
当然です。
ありとあらゆる状況が異なるんですから。
それでも、命の危険も省みず救助に行ってくれる救助隊には拍手を送りたいと思います。
②の、救助隊が失敗するなんて言語道断!という考えの方々は、ぜひとも考えを改めてほしい。
人間なんです。
ミスは当然ある。
今回はそれが人命に直結していたという話。
もちろん、職務怠慢による失敗は許されないでしょう。
今回の件も、詳細はわかりません。
が、雪山で活動する、それだけでも人間の思考力も行動力も低下します。
これは、どんなに訓練を受けていても、防ぎようのないことなんです。
救助隊なんだから救助できて当然!という考えは、どんな状況下でも100%成功すべし!と言ってるようなもの。
これはあまりにも傲慢な考え方です。
もしもこの考えを容認してしまったら、世の中は相当生きづらくなります。
そこのところは理解してほしいところです。
こういうあるべき論は、必ず誰かを不幸にしてしまいます。
では、両親の行動は間違っていたのか?
これもNoだと思います。
ご両親の感情として、道警を訴えたくなるのは非常にわかる。
なんせ息子が死亡しているんですから。
きちんとした対応がなされていたのか?
ひょっとしたら、ミスがなければ息子は自力で帰ってこれたのではないか?
明かな道警のミスではないのか?
息子を失った状態の遺族が、冷静な判断を下せる訳がない。
両親が道警を訴えたことが世間から糾弾されるようならば、これまた世知辛い世の中と言わざるを得ません。
最愛の息子を失ったんですよ?
皆さん、そんな時に冷静な判断できますか?
断言できます。
絶対に無理。
なので、この両親の訴えそのものは至極当然と思えます。
では、この事件何が間違っていたのか?
私は、最高裁の判決であったと思っています。
司法として毅然とした態度を示して、冷静に判断すべきだったのではないか…。
助けに行った道警も人間なんです。
人間なんだから、失敗もするでしょう。
それが、遺族からは恨まれ、司法からは責め立てられ…
これでは助けに行った道警の方があまりにも不憫です。
助けたかったに決まっています。
男性が滑落して死んでしまい、自分達を責めたに違いありません。
その結末がこれでは、助けに行った道警の方々があまりにも報われません。
ちなみに似たようなケースとして、日本では医師免許を持っていない人間が医療行為(人工呼吸や心臓マッサージは含まれません)を行った場合、罰せられます。
つまり、目の前で苦しんでいる人がいたとして、その人を助ける技術や知識があったとしても医師免許がない場合助けてはいけないんです。
ほうっておいたら死んでしまうとわかっていても、法律上は放っておいて死ぬのを待つ、が正しいんです。
医師免許を持っていない人が医療行為を行い、その結果人が死んだ場合、そのとき行われた医療行為が原因で死んでしまった可能性が否定できないからです。
…なんだかねぇ、って思いませんか?
助けることができる、もしくはできたのに見ていることしかできない、ってのは、その見ていることしかできなかった人達の心にも大きな影を落とすと思うんですよね。
もちろん、医療行為に制限がなくなってしまったら、そこかしこで誤った医療行為が行われて、死亡する人が増えてしまうという可能性も否定はできないです。
この辺、どうなるんでしょうか?
AIの出現で、解決されるんだろうか?
今回のこの事件の判決を機に世間が考えをめぐらすようになり、世の中がより良い方向に進むことを願わずにはいられません。
最後に、亡くなられた男性のご冥福をお祈りします。